MPマテリアルズ株が12.9%急騰、レアアース市場に再評価の波

  • 2025年11月8日
  • 2025年11月8日
  • BS余話

レアアース鉱業大手のMPマテリアルズ(MP)は、第3四半期決算を発表し、11月7日の米国市場で株価が12.9%高と大きく上昇しました。第3四半期の損失が想定よりも小さく、第4四半期に黒字化を見込むガイダンスを示したことが好感されています。現在建設中の重希土類分離施設は2026年中期に稼働予定で、主力製品であるネオジム・プラセオジム(NdPr)酸化物の実現価格は前年の48ドル/kgから59ドル/kgに上昇しました。今後は100ドルを超える可能性も指摘されており、投資家の注目が集まっています。

第3四半期決算と今後の見通し

MPマテリアルズは第3四半期に予想を上回る業績を発表し、損失の縮小と第4四半期の黒字転換を示しました。決算説明会では、カリフォルニア州マウンテンパス鉱山で建設中の重希土類分離施設が2026年中期に稼働予定であることを明らかにしました。さらに、アップルとの新契約により4,000万ドルの前払いを受けたこと、中国向け販売を停止してもなお実現価格が上昇している点などが評価されています。これらの要素が、同社の成長ポテンシャルを市場が過小評価しているとの見方を強めています。

なぜレアアース株は過小評価されているのか

レアアース関連株が低評価にとどまる背景には、いくつかの構造的要因があります。
第一に、レアアースは電気自動車、風力発電、ロボット、軍事用途など幅広い産業で不可欠な資源である一方、精錬工程の約85%を中国が独占しているという現実があります。
第二に、米国はこの依存構造からの脱却を進めており、その中核を担うのがMPマテリアルズです。
第三に、米中貿易関係の変動によって株価が短期的に大きく振れるため、市場が長期的な成長ストーリーを十分に織り込めていないことが挙げられます。
こうした理由から、一部のアナリストは「市場はレアアース分野の真の価値を理解していない」と指摘しています。

MPの成長モデルとリスク要因

MPマテリアルズの強みは、採掘から分離・精製、さらに永久磁石の生産までを一貫して行う垂直統合モデルにあります。米国内でこの体制を持つ企業は極めて少なく、供給の安定と高付加価値化を両立できる点が大きな競争優位です。
成長要因としては、NdPr価格の上昇、米政府および大手テック企業との契約拡大が挙げられます。特に米国防総省との契約では価格下限設定や需要保証が盛り込まれており、業界構造の転換を象徴する出来事です。
一方で、重希土類の分離・精製には多額の投資と時間を要し、価格変動や政策リスク、代替素材の登場などが潜在的なリスクとして残ります。

投資家が注目すべきポイント

今後の投資判断で注目すべきポイントは以下の通りです。
・第4四半期で黒字転換を確実に達成できるか
・新施設の稼働スケジュールが予定通り進むか
・NdPr価格が100ドル/kgを超える水準に到達するか
・米中関係や中国の輸出政策がどのような影響を与えるか

これらの要素は、レアアース産業の中長期的な成長を左右する重要な指標となります。

結びに

MPマテリアルズは、米国のレアアース自給体制を支える中核企業として存在感を高めています。短期的には株価の変動が大きいものの、長期的には「鉱山から磁石まで」を米国内で完結させる産業構造の変革が進行中です。市場がまだこの変化を十分に織り込んでいない可能性が高く、今後の決算や政策動向、価格トレンドを継続的に追うことが重要です。

*過去記事「米政府が支援強化へ 注目のレアアース5銘柄

最新情報をチェックしよう!
>

幸せな生活作りのための米国株投資。
老後資産形成のための試行錯誤の日々を報告していきます。
皆様の参考になれば幸いです。

CTR IMG