映画『マネー・ショート』で知られるマイケル・バーリ氏が、再び市場の注目を集めています。今回のターゲットは、なんと人工知能(AI)を象徴する銘柄群です。バロンズの記事「This Big Short Investor Is Betting Against AI. Is He Making a Big Mistake?(AIに賭ける市場に逆張りする“ビッグ・ショート”投資家、彼は間違っているのか?)」では、その背景と市場の反応が詳しく紹介されています。
バーリ氏、エヌビディアとパランティアに「プットオプション」
SECへの提出書類によると、バーリ氏はエヌビディア(NVDA)とパランティア・テクノロジーズ(PLTR)に対してプットオプションを購入しており、AIブームの中核銘柄を実質的にショートしています。同氏は株式を直接売っているわけではありませんが、その方向性は明確に「AI過熱への懸念」を示しています。SNSでも、AI投資の循環的な資金構造への批判的な見解を発信しています。
パランティアCEOが強く反発
この動きに対し、パランティアのアレックス・カープCEOは「AI革命を疑うショートセラーの話を聞くと非常にトリガーされる」とコメント。第3四半期決算で好調な結果を示した直後にもかかわらず、株価は7%下落しました。市場は依然としてボラティリティの高い局面にあります。
AI銘柄主導の上昇市場に逆らうリスク
S&P500は10月に2.3%の上昇を記録し、2021年以来の連続上昇を更新しました。そのうち80%の寄与は「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるAI関連大手企業群によるものです。特にエヌビディアはAI半導体市場で80%以上のシェアを握っており、マイクロソフト(MSFT)、アルファベット(GOOGL)、アマゾン(AMZN)、メタ(META)といった大手が来年にかけて約4,800億ドル(約72兆円)のAI投資を予定しています。こうした環境でのショートは「危険な賭け」と見る声も多いです。
「AIバブル」ではなく「構造的成長」か
記事では、テクノロジー企業の利益構造が依然として堅調である点も強調されています。S&P500全体の第3四半期利益の約45%をテクノロジーセクターが占め、第4四半期もほぼ半分を担う見通しです。エヌビディアの株価収益率(PER)は30倍前後と、アップル(AAPL)やマイクロソフトより低く、アマゾンとほぼ同水準にあります。これは「過熱ではなく実力に基づく評価」との見方を裏付けます。
キーンズの警句と市場の現実
ジョン・メイナード・キーンズの有名な言葉「市場はあなたの支払い能力が続くよりも長く非合理であり続ける」を引用しつつ、記事はバーリ氏の戦略が必ずしも成功するとは限らないと指摘します。特に11月から翌年4月にかけては、歴史的に株式市場が最も堅調な期間であり、「AIバブル崩壊」よりも「AI成長持続」が現実的なシナリオと見られています。
まとめ
AI銘柄をめぐる楽観と警戒のせめぎ合いが続く中で、バーリ氏のショート戦略は市場心理の鏡ともいえます。短期的な調整はあっても、AI関連の設備投資や収益構造の強さを考えると、長期的には「AIを疑う方がリスク」と見る投資家も少なくありません。
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