アナログ半導体大手のテキサス・インスツルメンツ(TXN)の株価が、最新の決算発表後に大きく下落しました。第4四半期の見通しが市場予想を下回り、業績回復が当初の想定よりも時間を要するとの見方が広がっています。
予想を下回る売上見通しとマージン圧力
同社は10月21日に12月期(第4四半期)の売上見通しを44億ドルと発表しました。これはウォール街のコンセンサス予想である45億ドルを下回る水準です。アナリストの間では、個人向け電子機器部門の低迷が平均以上の落ち込みを示すとみられています。
ジェフリーズのブレイン・カーティス氏は「アナログ半導体セクターの回復は一時停止しており、今後も季節的な減少が続く」と指摘しました。これにより、同業他社も同様の軟調さを示す可能性があると分析しています。
産業・自動車向け需要は安定も、回復は遅れ気味
テキサス・インスツルメンツは、産業機器や自動車向けにアナログおよび組み込み半導体を提供しています。これらの分野では一定の需要が維持されているものの、全体としての回復ペースは鈍化しています。
キャンター・フィッツジェラルドのマシュー・プリスコ氏は「顧客在庫の調整は一巡したものの、マクロ経済や地政学リスクの影響により、通常よりも遅い回復を見込む」と述べています。中国での取引も第2四半期の過剰な在庫積み増しが解消され、現在は「正常なレベル」に戻っているとのことです。
マージン低下と減価償却の影響
テキサス・インスツルメンツは具体的な粗利益率(グロスマージン)を開示していませんが、ジェフリーズのカーティス氏は「55%程度」と推定しており、これは市場予想の57.6%を下回る水準です。
また、TDカウエンのジョシュア・ブカルター氏は「2026年の減価償却費が増加することで、利益率の変動が大きくなる」と予想しています。さらに、税率上昇が収益の圧迫要因となる可能性も指摘しています。
長期的にはフリーキャッシュフローの拡大に期待
短期的な見通しは厳しいものの、ブカルター氏は「現在の投資サイクルが落ち着けば、テキサス・インスツルメンツのフリーキャッシュフローは拡大する」と述べています。これが同社株の長期的な成長を支える重要な要素であるとしています。
つまり、足元の業績は軟調ながらも、投資負担が軽減されるにつれてキャッシュ創出力が高まり、中長期的な株主価値の向上が期待できるという見方です。
まとめ
テキサス・インスツルメンツの株価は、2四半期連続で決算後に急落しています。今回の下落率は約8%(10月22日14時現在)で、前回の13%超の下落に続くものです。
アナログ半導体市場の回復が当初より遅れる中で、同社は依然として堅実な財務基盤を持ち、長期的なフリーキャッシュフローの改善余地を残しています。市場の不安定さが続く中でも、慎重な投資家にとっては中長期的な注目銘柄であり続ける可能性があります。
*過去記事「インテルとテキサス・インスツルメンツが格下げ:AI戦略の遅れと関税リスクが重荷」
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