米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の株価が10月21日、15%超の急騰となり、2020年以来の大幅上昇を記録しました。関税コストの見通しが改善し、電気自動車(EV)生産削減の判断が功を奏すると見られていることが背景にあります。
関税コストの圧縮と価格上昇が業績見通しを押し上げ
この日の朝、四半期決算を発表したゼネラル・モーターズは、2025年の調整後1株利益見通しを従来の8.25〜10ドルから9.75〜10.50ドルに引き上げました。この上方修正は、関税コストの低下と車両価格の上昇を反映したものです。下限値でもアナリスト予想の9.46ドルを上回っており、市場にポジティブなサプライズを与えました。
第3四半期の調整後1株利益は2.80ドルと予想(2.29ドル)を大きく上回り、売上高は前年同期比わずかに減少したものの485億9,000万ドルと堅調でした。
GMは通期の関税コスト見通しを従来の40億〜50億ドルから35億〜45億ドルに引き下げると発表しました。世界的なサプライチェーンを持つ同社にとって、このコスト削減は大きな追い風となります。
EV生産の見直しが財務健全化を後押し
GMは最近、EV生産の規模を縮小する方針を発表しました。これは短期的な調整ではなく、中長期的な収益改善を目的とした戦略的判断です。メアリー・バーラCEOは、「過剰生産を是正することで、2026年以降の損失削減を目指す」と述べています。
第3四半期の販売台数は71万台で前年同期比8%増となり、市場シェアは17%と2017年以来の高水準を記録しました。EVの販売も過去最高の6万6,501台に達しましたが、全体の1割未満にとどまっています。バーラCEOは、「規制の変化や消費者向け補助金の終了により、短期的なEV需要は想定より低下する」と説明しました。
RBCキャピタル・マーケッツのトム・ナラヤン氏は、「2026年のコンセンサス予想は大幅に上方修正される可能性が高い」と指摘しています。
北米事業の利益率回復が最優先課題に
GMは北米市場における調整後営業利益率を8〜10%へ戻すことを最優先課題としています。第3四半期の利益率は6.2%で、関税による11億ドルの影響を含んでいます。同社はEVの収益性改善や保証コスト削減などを通じて、目標達成を目指すとしています。
同社の最高財務責任者(CFO)は、「これまでのような政策主導の人工的なEV市場ではなく、より自然な需要環境の中でも成功できる」と述べ、事業の持続的成長に自信を示しました。
トランプ政権の税制優遇が追い風に
メアリー・バーラCEOは、トランプ大統領が米国内で組み立てを行う自動車メーカーへの税控除を拡大したことに謝意を表明しました。この優遇策は、輸入部品への関税負担を相殺する効果があり、GMにとって重要な支援となります。
一方で、トランプ政権は中型・大型トラックおよび部品に対して新たに25%の関税を来月から導入する予定です。フォード(F)も同様に影響を受けますが、関税コスト削減策の進展により、自動車各社の業績への懸念は和らいでいます。
この日の株価上昇率は約15.7%に達し、2020年3月24日の19.9%上昇以来の最大上昇となりました。投資家は、GMが短期的な課題に対応しつつ、中長期的な収益改善へ着実に舵を切ったことを好感しています。
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