人工知能（AI）の普及がオンライン検索のあり方を大きく変えています。特に、ChatGPTなどの生成AIやグーグルの新機能「AI Overviews」の登場により、検索エンジンを経由するサイト訪問が減少する企業が増えています。しかし、興味深いことに、サイトのアクセス数が減っても売上が維持、あるいは増加しているケースが見られます。
アクセス減でも売上増 メキシコのホテルチェーンの例
メキシコのホテルチェーン「Tafer Hotels & Resorts」は、昨年から自社サイトへのトラフィックが25％減少したにもかかわらず、売上は前年を上回っています。同社のデジタルマーケティング責任者は、以前の訪問者の多くが「カンクンの天気」などを調べて偶然サイトを訪れていただけで、実際の予約にはつながっていなかった可能性を指摘しています。
現在では、AI検索や口コミなど他の情報源を経由して訪れる利用者の方が、実際に宿泊予約へと結びつく割合が高くなっているといいます。
企業が直面するAIによる検索行動の変化
The Informationによると、フォーチュン500を含む複数の企業が、過去1〜2年でウェブトラフィックの減少を経験しています。その一因は、ユーザーがAIチャットボットを情報検索の代替手段として使うようになったことです。グーグルもAI機能を検索に組み込み、従来の青いリンクが下部に押しやられるケースが増えています。
グーグル側は「検索からウェブサイトへのクリック数は安定している」と説明していますが、出版社など広告収入に依存する業界では影響が大きく、ローリングストーンやバラエティを運営するPenske Mediaは収益減少を理由にグーグルを提訴しました。
広告戦略を再構築する企業たち
多くの企業は、検索流入の減少を補うためにマーケティング戦略を見直しています。
Taferは検索広告への支出を10％増やし、ウェブサイト広告を15％削減しました。
一方で、米国のテレメディスン企業「Lifeforce」はストリーミング広告への投資を拡大し、YouTube向け動画を重視するブランドも増えています。
さらに一部企業は「生成エンジン最適化（Generative Engine Optimization）」と呼ばれる新手法を導入し、RedditなどAIが学習に使うプラットフォームでの露出を高めています。
AI時代に求められる新しいSEOの形
AIチャットボットからの流入はまだ全体の一部ですが、増加傾向にあります。Taferでは、ChatGPTやPerplexityなどAI検索経由のアクセスが全体の10％に達し、前年の1％から大きく伸びています。
また、AI検索経由の訪問者は滞在時間が長く、予約や購買につながる可能性が高いという調査結果も出ています。
企業の中には、AIに「理解されやすい」言葉でコンテンツを書く工夫を始めたところもあります。FAQの回答を「はい」から「はい、予約をキャンセルできます」といった完全な文に書き換えるなど、小さな改善がAI検索での表示に影響するようです。
サイト訪問の「質」を問う時代へ
AIによる検索の変化は、単なるトラフィック減少ではなく「本当に価値のある訪問者」を見極める転換点となっています。これまでの「アクセス数を増やす」戦略から、「意図を持った訪問者をどう増やすか」へと企業の焦点が移りつつあります。
アクセスの減少を悲観するのではなく、AI時代に最適化された新しい集客モデルを模索することが、今後のデジタルマーケティングの鍵になりそうです。
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