ASTスペースモバイル(ASTS)の株価は、これまで「月まで届く勢い」と評されるほどの急上昇を見せてきました。しかし、その勢いにブレーキがかかっています。バークレイズ証券のアナリストであるマチュー・ロビリアード氏が10月17日、同社株を「買い」から一気に「売り」へと2段階格下げしたためです。このような“ダブル格下げ”はウォール街でも珍しい動きです。
株価の急上昇と過熱した評価
ASTスペースモバイルは、衛星を利用した地上通信インフラを開発している企業です。株価はここ3か月で56%上昇、6か月で283%上昇、年初来では324%もの伸びを記録していました。宇宙関連銘柄への投資熱の高まりもあり、同社は注目を集めてきました。しかし、ロビリアード氏は「評価が過度に膨らんでいる」と指摘しています。
ASTスペースモバイルは2027年まで営業利益が黒字化する見通しはなく、現在の株価は2027年の予想売上高の約34倍という高い水準で取引されています。アナリストによる平均目標株価は55ドルと、直近の株価よりかなり低く設定されています。
バークレイズの見解と目標株価
バークレイズのロビリアード氏は、目標株価を60ドルに据え置いたまま、「買い」から「売り」へと2段階引き下げました。この判断について、「衛星を使った直接通信という事業機会は魅力的だが、現状のバリュエーションは行き過ぎている」と述べています。ASTスペースモバイルの将来性を評価しつつも、投資タイミングとしては慎重な姿勢を示しました。
現在、ASTスペースモバイルをカバーするアナリストのうち46%が「買い」評価を維持しており、S&P500銘柄の平均である55%を下回っています。市場では、宇宙関連銘柄の急上昇ペースにウォール街が追いつけていない状況です。
宇宙関連株の人気とトランプ大統領の影響
宇宙関連企業の人気が高まった背景には、トランプ大統領による政策転換があります。政府が従来のNASA主導型から民間企業の活用へとシフトしたことで、スタートアップ企業に新たな機会が生まれました。例えば、ロケット・ラブ(RKLB)の株価は、2024年11月以降で約470%も上昇しています。
宇宙ビジネスは、通信や防衛分野を中心に新たな成長市場として注目されていますが、現時点では収益化に時間がかかる企業も多く、投資家にはリスク管理が求められます。
まとめ
ASTスペースモバイルの株価は、短期間で大きく上昇したことから過熱感が強まり、バークレイズによる異例のダブル格下げを受けて調整局面に入りました。長期的には衛星通信市場の拡大が期待される一方で、バリュエーションの高さや利益化の遅れがリスク要因となっています。今後は、同社が実際にどのように商用化を進めるかが焦点となります。
*過去記事「ASTスペースモバイル株が急騰 米政府契約拡大と衛星打ち上げ計画で期待感」
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