人工知能(AI)が小売業を根本から変えようとしています。これまでの「スマホ」や「店舗」中心の買い物から、今後は「チャットウィンドウ」で完結する時代が来るかもしれません。2025年10月10日付けのバロンズの記事では、AIによる購買行動の変化と、その波に乗るウォルマート(WMT)の戦略が紹介されています。
チャットが新たなチェックアウトに
TDカウエンのアナリスト、オリバー・チェン氏は「チャットが新たなチェックアウトになる」と述べ、AIチャットボットを通じたショッピングの拡大に注目しています。消費者がChatGPTのようなチャット型AIに慣れるほど、企業は自社の商品やサービスを生成AI向けに最適化する必要があります。
同氏の調査によると、2025年9月25日までの12カ月間で、アマゾンとウォルマートがChatGPT経由のトラフィックの88%を占めました。一方で、そのAIチャット経由のアクセスが占める割合は依然として主要小売業者のウェブトラフィック全体の1%未満であり、成長余地は非常に大きいといいます。
ウォルマートの「Sparky」戦略
ウォルマートは、AIを活用した小売の変革においてリーダー的存在と見なされています。同社の生成AIショッピングアシスタント「Sparky」は、ユーザーが商品を探したり、イベントの準備をしたりするのをサポートします。ウォルマート+(プラス)の約3000万人の会員データを基盤に、個別提案や返品手続きなどのアフターサポートまで行うことができます。
ウォルマートの米国eコマース部門責任者デービッド・グッギナ氏は、「たとえば釣り旅行の計画を立てたいとき、Sparkyは地元の釣りスポットと必要な道具を提案し、自宅に配送する手配までしてくれる」と説明しています。
AI活用による効率化とデータ戦略
ウォルマートは在庫管理、需要予測、物流効率の改善にもAIを導入しています。新しい物流センターではAI自動化により生産性が2倍になった例もあります。また、自然言語による社内データ分析ツールも導入しており、従業員がチャット形式で複雑なデータを扱えるようになっています。
チェン氏は、AI競争の焦点が「誰がデータを握るか」に移っていると指摘します。ウォルマートは自社のファーストパーティデータを活用し、広告ビジネスやロイヤリティプログラムと連携させることで、強力なデータ循環モデルを構築しているのです。
株価への長期的な追い風
AIの導入はウォルマート株にとって長期的な成長要因となる可能性があります。記事によると、同社の株価は2025年に13%上昇し、過去12カ月で27%上昇しています。小売とAIの融合が進む中、ウォルマートは「AI時代のリテール覇者」として注目を集めています。
*過去記事「不況に強い?ゴールドマンが選んだ「ウォルマート」と「マクドナルド」の実力」
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