2025年9月23日、スノーフレーク(SNOW)は、AI時代における企業アプリ間の「データの壁」を打ち壊すべく、大胆な取り組みを発表しました。これまでセールスフォース(CRM)やアトラシアン(TEAM)といった老舗ソフトウェア企業が、自社アプリ内のデータをAIスタートアップから遮断する動きが見られましたが、スノーフレークはこれに逆行する形で“開放”を進めています。
セールスフォースも加わるデータ連携コンソーシアム
スノーフレークが主導するこの新しいコンソーシアムには、なんとセールスフォース自身を含む十数社のエンタープライズアプリやデータベースプロバイダーが参加しています。目的は、異なるアプリケーションやサービスに分断された企業内データを、AIチャットボットなどのツールが統合的に扱えるようにすることです。
例えば、営業担当者がある顧客との打ち合わせ前に「購買履歴」「製品提案のチャンス」「未解決のサポート課題」などを一気に把握したいと思っても、現在はそれぞれ別のアプリに分散されており、AIが横断的にアクセスするのは困難です。スノーフレークのプロダクト責任者であるジョシュ・クラール氏は、こうした状況を打破すべく、統一されたデータ形式を採用する動きが重要だと強調しました。
MCPでAI連携を効率化
この取り組みの鍵となるのが「Model Context Protocol(MCP)」です。MCPを導入することで、AIエージェントがアプリから情報を取得したり、実際にアクションを実行したりするための“手間”が大幅に削減されます。これにより、AIによるデータ検索や意思決定がスムーズに行える環境が整いつつあります。
参加企業の中には、ビジネスインテリジェンスのThoughtSpotやデータカタログのAlationなども含まれています。資産運用大手のブラックロックもこの構想に賛同し、初期メンバーに名を連ねました。
一方で広がる“非協力”の動きも
このようなスノーフレークの動きは歓迎される一方で、Slack(セールスフォース傘下)やFigma、Notion、Atlassianなどは、AIベースのクロスアプリ検索を制限する方向に進んでいます。オープンAIのChatGPTも、こうした障壁に直面しているという報告があります。
AI時代において、企業がどれだけ柔軟かつオープンなデータ戦略を持つかは、競争力を左右する重要な要素となりつつあります。
大企業がAI活用でつまずく理由
General CatalystのCEOであるヘマント・タネジャ氏は「多くの大企業がAIへの投資で期待した成果を得られていない」とし、その原因は“戦略不足”にあると指摘します。
効果的にAIを活用するには、以下の4つの要素が不可欠だといいます。
- データの整理と整備
- モデルの学習環境構築
- マネジメント構造の再設計(AIと人間の関係性)
- 経営層のコミットメント
マサチューセッツ工科大学(MIT)の調査によると、AI導入を試みた企業の95%が業績へのインパクトを出せなかったとされています。
スノーフレークの挑戦が意味するもの
現時点では、スノーフレーク主導のコンソーシアムはBIおよびアナリティクス市場全体のごく一部を占めるに過ぎず、象徴的な意味合いが強いと見る向きもあります。グーグルやマイクロソフト(BI最大手)からの公式コメントは出ていないものの、今後の動向次第では業界のルールそのものが変わる可能性もあります。
企業のデータ活用戦略がAI時代にどのように変化するのか――スノーフレークの一手は、その序章に過ぎないのかもしれません。
*過去記事はこちら スノーフレーク SNOW
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