2025年9月25日、IBM(IBM)とHSBC(HSBC)が量子コンピュータを用いた実証実験を行い、アルゴリズムによる社債取引の精度向上に成功したと報じられました。これが実現すれば、量子コンピューティングは金融業界に革命をもたらす可能性があります。
実験の内容と成果:誤差を34%削減
この取り組みでは、IBMの量子プロセッサ「Heron(ヘロン)」を使ったコンピュータと、従来型のAIモデルを統合して、ヨーロッパの債券市場の動きを予測するアルゴリズムを検証しました。その結果、従来手法と比べて取引成立の予測における誤差が34%も減少したとのことです。
HSBCは「これはアルゴリズム取引の精度向上に直結し、リアルタイムの市場でも収益性向上に寄与する」と述べています。研究成果は2025年9月22日にarXiv(アーカイブ)へ提出されています。
IBMとHSBC、それぞれの狙い
IBMは2000年に量子コンピュータを世界で初めて実用化して以降、業界をリードしてきた企業です。今回の成功について、IBM量子部門の副社長であるジェイ・ガンベッタ氏は「実データに基づく最初の成果であり、量子技術の実用化に向けた重要な一歩」とコメントしています。
一方のHSBCも、量子分野で積極的に動いており、ハネウェル傘下の量子企業「Quantinuum(クアンティニューム)」との提携も行っています。
株式市場の反応:IBM急騰、他の量子株は下落
この発表を受けて、IBMの株価は5.3%上昇し、7月以来の高値を記録しました。しかし、イオンキュー(IONQ)、ディーウェーブ・クオンタム(QBTS)、リゲッティ・コンピューティング(RGTI)などの他の量子関連銘柄は軒並み下落しました。
こうした動きからも、収益面で苦戦するスタートアップとは対照的に、IBMのような大手が現実的な活用事例を示したことが投資家の評価につながったと見られます。
今後の展望:量子エコシステムの成熟に期待
IBMのガンベッタ氏は、今後は1社独占ではなく、量子コンピューティングのエコシステム全体が健全に成長していくことが重要と述べています。
IBMは2030年までに「フォールトトレラント量子スーパーコンピュータ」の完成を目指しており、今回のような実用事例は今後さらに増えていく見通しです。
おわりに
今回の実証実験は、量子コンピューティングが単なる理論に留まらず、金融業界の現実世界に応用されつつあることを示す大きなマイルストーンです。今後もIBMやQuantinuum、イオンキューなど、量子関連企業の動きから目が離せません。
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