米メディア「The Information」は2025年9月19日、オープンAIが今後数年で合計1,000億ドル規模のバックアップサーバー確保を計画していると報じました。すでに2024年から2030年までのサーバーレンタルコストとして3,500億ドルを投じる計画がある中で、さらにこの1,000億ドルを上乗せする形となります。
この投資の背景には、AIモデルやChatGPTの新機能リリース時にユーザー数が急増し、計算能力が逼迫する事例が続いたことがあります。実際、オープンAIの最高財務責任者であるサラ・フライアー氏は、ゴールドマン・サックスのカンファレンスで「オープンAIは大規模な計算能力の制約に直面している」と述べています。
サム・アルトマン氏の“電力網を超える”野望
オープンAIのCEOであるサム・アルトマン氏は、将来的にオープンAIが「米国全体の電力網よりも多くの電力を必要とする」ようになると語っており、それを見据えたサーバー確保が必要と考えています。同氏はAI競争においてサーバーアクセスの有無が最重要ファクターになると見ており、バックアップサーバーによって新たなプロダクトのヒットや研究開発の加速に備える方針です。
仮に想定外のトラフィックが発生しても、サーバー不足によってサービス品質が低下したり、アルファベットやメタのような競合にユーザーが流出したりするリスクを最小限に抑える狙いがあります。
年間支出は8.5兆円規模に
オープンAIはこのバックアップサーバーを含め、今後5年間で平均年間850億ドルをサーバーレンタルに支出すると予測しています。これは2024年時点でAWS、マイクロソフト、Google Cloud、オラクルを含む主要クラウド企業の合計売上(約2,000億ドル)に匹敵する水準です。
さらに、こうした支出によりオープンAIのキャッシュバーン(資金消費)は2029年までに合計1,150億ドルに達する見込みです。ただし2030年には黒字転換し、売上は130億ドルから2,000億ドルへ拡大すると同社は予測しています。
GPUの“囲い込み”懸念も?
今回のような大規模なサーバー確保が進めば、オープンAIがエヌビディア製GPUを“囲い込む”形になる可能性も指摘されています。特に他社がGPUを入手できず、別のチップベンダーへと流れるリスクも考えられ、エヌビディアにとっても慎重な調整が求められそうです。
なおオープンAIは将来的に自社製チップやデータセンターの構築も視野に入れており、最終的には“フルスタック企業”としての体制を整える計画です。
ChatGPTは10億週次ユーザー目前に
オープンAIは2025年7月時点で7億人の週次アクティブユーザーを記録しており、年末までに10億人に到達する見通しです。過去には一部機能の制限や長時間の障害も発生していますが、依然としてチャットボット分野では圧倒的な地位を維持しています。
今後もオープンAIは、AI市場における覇権を確保するために、巨額の投資と先手のサーバー確保戦略を続けていくとみられます。
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