米国の量子コンピューティング企業イオンキュー(IONQ)が、英国のOxford Ionicsと米国カリフォルニア州のVector Atomicの2社を買収することを発表しました。買収総額は13億ドル相当にのぼり、イオンキューの積極的な事業拡大戦略が一段と明確になってきています。
英国拠点と技術獲得を目的としたOxford Ionicsの買収
イオンキューは先週、Oxford Ionicsの買収完了を発表しました。買収額は約10億7500万ドルで、そのほとんどがイオンキューの株式で支払われます。同社は英国政府の投資安全保障ユニットから承認を受けたことで、正式に取引が完了しました。
この買収により、イオンキューはOxford Ionicsの科学者・エンジニアチーム、トラップイオン技術関連の特許、さらに英国拠点を獲得します。イオンキューの量子システムに、標準的な半導体チップで製造されたイオントラップ技術が加わることで、技術的な融合が進む見込みです。
量子センシングへの進出を担うVector Atomicの買収
さらにイオンキューは、量子センシングと原子時計を手がける米国のVector Atomicを2億5000万ドルで買収することを発表しました。こちらは全額株式での取引となっており、国防関連用途も視野に入れた買収とされています。
Vector Atomicの技術は、国の安全保障に関わる領域で応用が期待されており、イオンキューの「フルスタック量子プラットフォーム」強化に貢献するとみられています。
米政府向け事業「イオンキュー・フェデラル」の立ち上げとシナジー
この買収発表は、イオンキューが数日前に発表した米国政府向け部門「イオンキュー・フェデラル(IonQ Federal)」の設立とタイミングを同じくしています。今後は政府機関や連邦系パートナーとの提携を強化し、量子技術の安全保障活用を目指す姿勢が明確になっています。
過去の買収と今後の注目ポイント
イオンキューは2025年に入り、買収攻勢を強めています。5月には量子ネットワーキング技術を持つスイスのID Quantiqueを、6月には衛星企業Capella Spaceを、7月には量子コンピュータ間接続技術のLightsyncを買収してきました。
CEOのニコロ・デ・マシ氏は、「通信の安全性は文明の基盤だ。銀行、eコマース、戦場に至るまで、すべてに影響する」と語っています。量子コンピュータがRSA暗号を破る可能性が高まる中、同社は「量子コンピューティング競争」だけでなく、「量子セキュリティ競争」にも勝つ必要があると強調しています。
株価と市場の反応
買収報道を受け、イオンキューの株価は9月17日の米国市場で6%以上上昇し、66ドルとなりました。業界同業他社であるリゲッティ・コンピューティング(RGTI)やディーウェーブ・クオンタム(QBTS)も上昇しており、市場の期待の高まりが見て取れます。
この一連の買収は、イオンキューが量子技術のコア領域を拡張し、次世代通信・センシング・セキュリティの分野で優位性を築こうとしている動きとして注目に値します。今後の技術統合と政府案件の進展が、同社の次なる成長ドライバーとなる可能性があります。
*過去記事「「量子のエヌビディア」イオンキューに買い評価、注目の理由とは」
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