マイクロソフト(MSFT)が展開するAI搭載の「Microsoft 365 Copilot」は、Office製品の成長を次の段階へ導く切り札と期待されています。しかし、The Informationの報道によれば、導入企業の一部ではコストに見合った投資対効果が見えにくいという声もあるようです。
インフォマティカはかつて365 Copilotを試験導入しましたが、CIOのGraeme Thompson氏は「価格に見合うユースケースが見つからなかった」として現在は非採用。同社は独自に開発した社内チャットボットとオープンAIのモデルを用いたソリューションへと方向転換しています。
ナデラCEO直轄の改革で開発体制を再編
サティア・ナデラCEOはCopilot強化を最優先課題と位置付け、Office部門の人事を再編。リンクトインCEOのライアン・ロスランスキー氏と、業務アプリ担当VPのチャールズ・ラマンナ氏をCopilot開発の責任者に据え、品質と開発スピードの改善を目指しています。
ラマンナ氏は最近、オープンAIではなくアンソロピックのAIモデル「Claude Sonnet 4」への一部切り替えを主導しました。これにより、ExcelやPowerPointにおけるAI機能の信頼性が大幅に向上したと社内関係者は述べています。特に複雑なExcel演算処理では「一発で正確な作業を完了できる」とマイクロソフトの社員は評価しています。
機能遅延と価格への不満が普及を阻む要因に
Copilotの提供価格は1ユーザーあたり月額30ドルと、Office 365の基本料金をほぼ倍にする水準です。マイクロソフトは当初、最小導入数を300席としていたものの、現在はこの制限を撤廃し、大口契約には値引き対応も始めています。
とはいえ、多くのCIOは明確な投資対効果が見えないまま導入に踏み切るのはリスクがあるとして、慎重な姿勢を崩していません。SHIインターナショナルの副社長レーン・シェルトン氏はCopilotのファンとしながらも、全社員には配布しておらず、コストの壁を認めています。
今後の注目は「マイクロソフト・イグナイト」での新機能発表
マイクロソフトは年内にCopilotの次期アップデートを予定しており、特にExcelとPowerPointの機能強化が期待されています。11月のマイクロソフト・イグナイトで、アンソロピックのモデルを使った高度な資料作成機能やプレゼン作成支援機能が発表される可能性があると報じられています。
ナデラ氏はCopilotを仮想社員として活用できるレベルに高めたい意向で、人事マネージャーや営業アシスタントの役割をこなせるAIとして完成させることを目標に掲げているといいます。
まとめ:AI×Officeの未来は説得力にかかっている
記事では、トヨタやバークレイズ、PwCといった大手企業がCopilotを大規模導入している実例も紹介されており、マイクロソフトの営業活動は一定の成果を上げているようです。ただし、AIによるOffice改革が本格的な成長ドライバーになるには、企業ユーザーがその価値を明確に実感できる状態に進化させることが不可欠です。
The Informationが伝えたように、Copilotが高い理想を掲げた割に、いまだ使いどころが曖昧なプロダクトと見られている現状を乗り越えるには、今後のアップデートと価格戦略の練り直しが鍵を握ることになりそうです。
*過去記事はこちら マイクロソフト MSFT
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