米国のレアアース業界で注目を集めているのが、MPマテリアルズ(MP)です。カリフォルニア州マウンテンパスにある米国最大のレアアース鉱山を保有し、採掘から精製、磁石の製造までを一貫して手がける数少ない企業です。2025年9月12日付の記事で投資情報メディア「バロンズ(Barron’s)」は、同社が米国政府の戦略において中心的な役割を担っていると報じました。
倒産資産からの再出発
MPマテリアルズのルーツは、かつてのモリコープという企業にあります。モリコープは2015年に破綻しましたが、2017年に投資家ジェームズ・リティンスキー氏が20.5百万ドルで資産を買収し、MPマテリアルズとして再スタートしました。そこからアジア市場への販売や精製技術への投資を進め、採掘企業から垂直統合型メーカーへと成長してきました。
国防総省との大型契約
MPマテリアルズの転機となったのは、2025年7月に発表された米国防総省との契約です。この契約には以下のような内容が含まれています。
- ネオジム・プラセオジム製品に対して1kgあたり110ドルの価格保証
- 新工場「10X」で生産される磁石の全量買い取り保証
- 米政府による400百万ドルの優先株出資
これにより、同社の年間EBITDAは650百万ドル規模が見込まれるようになり、事実上、米政府が最大の後ろ盾となりました。この仕組みは、中国による価格操作からMPを守る強力な防波堤となっています。
株価と投資家の評価
契約発表後、MPの株価は20ドル以下から一時82ドル超まで急騰し、現在は60ドル台で推移しています。依然として割高感はあるものの、政府による収益保証と今後の成長計画を踏まえると「リスクの少ない投資先」として評価されています。アナリストの中には80ドルの目標株価を設定している声もあります。
未来の成長戦略
MPマテリアルズは今後、単なるレアアース採掘企業から、防衛・航空宇宙産業のサプライヤーへと進化することを目指しています。3段階の成長戦略を掲げており、
- 米政府や既存顧客向けに磁石を安定供給する
- 電動モーターなど川下製品へ進出する
- ロボティクスやドローン向けの部品供給へ拡大する
といった構想を持っています。CEOリティンスキー氏は、ロボティクス分野における磁石需要を「巨大な機会」と表現しています。
まとめ
バロンズの報道によれば、MPマテリアルズは米国のレアアース戦略における「切り札」とされています。中国が支配してきた市場構造を崩すための中心企業であり、今後10年の成長と変革が期待されます。鉱山企業から高付加価値の防衛・ハイテク産業サプライヤーへと進化するその姿は、投資家にとっても注目の的です。
*過去記事「レアアース最大手MPマテリアルズ、株価200%上昇の理由」
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