半導体業界の重要プレイヤーであるオランダのASML(ASML)が、AI分野にも本格的に足を踏み入れました。2025年9月、ASMLはフランスの人工知能企業ミストラルAIに対して、11%の株式取得と約13億ユーロの出資を発表しました。
この投資により、ASMLはミストラルの最大株主となります。
LLM開発企業への異例の出資
ミストラルAIは、オープンソースと独自の大規模言語モデル(LLM)を開発している企業で、オープンAIやアンソロピックと並び注目を集めています。創業者はDeepMindやメタ出身者で構成されており、フランスのAIスタートアップとしてヨーロッパの技術自立を象徴する存在です。
そんなミストラルに対するASMLの出資は、製造装置企業としては異例の判断ですが、同社はこれを「戦略的投資」と位置づけています。
ASMLが描くAIとの統合戦略
ASMLは半導体製造に不可欠な「フォトリソグラフィ装置」の設計・製造で知られる企業です。AI企業への出資は一見すると畑違いに見えるものの、ASMLのCEOであるクリストフ・フーケ氏は「従来の取引関係を超えたパートナーシップにより、ミストラルの価値向上と当社の研究開発面でのAI活用が期待できる」と述べています。
実際、CFOのロジャー・ダッセン氏がミストラルの取締役に就任することからも、その関与の深さがうかがえます。
米銀アナリストが示す評価と今後の展望
バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ディディエ・スセマ氏は、この出資が「AIという視点をASMLの企業評価に織り込ませるきっかけになる」と分析しています。
この投資により、ASMLはAI分野の技術ロードマップをより深く理解できるようになり、規制対応や輸出管理においても有利なポジションを築けると期待されています。
加えて、ASMLは2030年までに累計700億ユーロのフリーキャッシュフローを見込んでおり、今回の出資はその中でもごく一部に過ぎないことから、リスクよりも戦略的リターンに重きを置いていると考えられます。
欧州テックの象徴としてのASML
この投資は、ASMLが「欧州テックの牽引役」としての立場をさらに強化する一歩でもあります。欧州では2030年にかけてAIによる経済波及効果が期待されており、ASMLはその中心的存在になろうとしています。
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