2025年に入り、AIデータセンター関連銘柄として注目を集めているのが、クレド・テクノロジー(CRDO)です。高速インターコネクト技術のリーダーとして急成長中の同社について、短期・中期・長期の視点から市場での立ち位置と成長性を整理します。
技術的な市場位置付け
クレド・テクノロジーは、光学および電気式の両方に対応したEthernetインターフェース技術を開発し、次世代データセンターに最適化された通信ソリューションを提供しています。特にアクティブ電気ケーブル(AEC)分野においては先駆者として評価され、HiWire™ AECシリーズを中心とする製品群が市場で広く採用されています。
同社は、SerDes技術やDSPとの高度な組み合わせにより、通信の高速化・省電力化を両立させたIC・IPソリューションを実現しています。これらはAIや高性能コンピューティング(HPC)向けインフラの根幹を支える要素であり、AIインフラ市場の進展とともにその需要が拡大しています。
競合他社との比較と優位性
同業他社としては、ブロードコム(AVGO)が市場をリードし、マーベル・テクノロジー(MRVL)も存在感を示しています。ただし、クレド社はその中でもAIデータセンターに特化した高速接続分野で独自のポジションを確立しており、主要クラウド事業者からの引き合いも強くなっています。
実際にマイクロソフト(MSFT)やメタ・プラットフォームズ(META)、アマゾン(AMZN)、アルファベット(GOOGL)などが同社の製品を採用しており、特にマイクロソフトのAIサーバーにはHiWire AECケーブルが多数導入されています。このような大口顧客との戦略的関係が、クレド社の競争力の源泉になっています。
短期の市場展望
短期的には、生成AIブームに伴うハイパースケール・データセンターの拡張が同社の追い風となっています。2026年度第1四半期の決算では、売上が前年同期比で約4倍に急増し、利益も市場予想を大きく上回りました。これを受け、通期の売上見通しは従来の約8億ドルから9億6千万ドルへと大幅に引き上げられています。
AWSとの複数年にわたるAEC製品採用も始まり、今後の収益の安定性が高まると見込まれています。また、同社の省電力・高信頼性な製品群は、AIサーバーの省エネニーズにもマッチしており、採用事例の拡大が期待されています。
中期の市場展望
中期的には、AI向けインフラ投資の継続により、クレド社の成長は加速すると予測されています。BofA証券によれば、2024年から2027年の間に1株当たり利益(EPS)は年平均で74%成長すると見込まれています。
また、エヌビディア(NVDA)の最新GPUやアマゾンのAIアクセラレータ「Trainium 2.0」などの普及により、800Gbps~1.6Tbpsクラスのネットワーク帯域が求められる時代が到来しており、これに対応する高速インターコネクト技術としてクレド社の製品が選ばれつつあります。
一方で、中期的な課題として顧客集中リスクが挙げられます。売上の大半が少数のハイパースケーラーに依存しているため、発注の抑制や乗り換えリスクへの対策が必要です。これに対してクレド社は顧客の多様化を進めており、2023年後半には最大顧客の売上比率が41%に低下するなど、依存度を下げる取り組みが進行中です。
長期の市場展望
長期的には、AIデータセンター内のネットワークはさらなる高速化・大容量化へと進み、短距離通信においてはAEC技術の需要が根強く残ると見られています。今後、チップと光モジュールを一体化する「コパッケージド・オプティクス(Co-Packaged Optics)」が登場しても、ラック内の数メートル程度の通信では、密度・コスト・熱制御の観点からAECの優位性が保たれる可能性があります。
また、PCIe 7.0やCXL 3.0といった新しいインターフェースが普及すれば、クレド社が保有するSerDes IPのライセンス収入増加も見込まれます。AIデータセンター構築が進む中、同社の高速通信技術は引き続き必要とされ、競争力の高いポジションを維持することができると予測されます。
まとめ
クレド・テクノロジーは、AIデータセンター市場における高速接続技術という成長分野において、技術力・製品力・顧客基盤の3点で優れたポジションを確立しています。短期的にはハイパースケーラーとの提携による業績拡大が進み、中期的には顧客の多様化によって安定性も高まる見込みです。長期的には、次世代インフラの構築に必要不可欠な存在として、同社の価値は一層高まっていくと考えられます。
*過去記事「クレド・テクノロジー急成長、次のAIスター銘柄候補に浮上」
🎧この記事は音声でもお楽しみいただけます。AIホストによる会話形式で、わかりやすく、さらに深く解説しています。ぜひご活用ください👇