2025年9月5日、テスラ(TSLA)の株価が大きく上昇しました。背景にあるのは、同社の取締役会が発表した、イーロン・マスクCEOに対する新たな報酬パッケージ案です。株式市場はこの提案を前向きに受け止め、テスラ株は一時355ドル超を付けた後、3.6%高の305.84ドルで取引を終えました。
史上最大級の業績連動型報酬案
取締役会の提案は、2025年の委任状(プロキシ)報告書に記載されたもので、マスク氏に対して最大4億2500万株の新たなストックオプションを付与するというものです。これは現在の発行済み株式数の約12%に相当し、全ての条件が満たされた場合、1兆ドル近い価値になると見込まれています。
この報酬案には、「マスク氏がテスラに残る場合」という記述が含まれており、移籍の可能性も想定されたようです。報酬の前提としては、時価総額8.5兆ドルの達成が掲げられており、1株あたりおよそ2700ドルになる計算です。マスク氏が保有する全株式とストックオプションの評価額は、およそ3兆ドルに達する可能性があります。
成功条件:EV、FSD、ロボタクシー、そして人型ロボット
この報酬パッケージの裏には、テスラが目指す壮大な目標があります。達成が求められるのは以下の4項目です。
- 年間2,000万台のEV納車
- フルセルフドライビング(FSD)のアクティブ契約数1,000万件
- 人型ロボット「オプティマス」100万体の出荷
- 商用稼働中のロボタクシー100万台
これらが実現すれば、テスラは年間4000億ドルのEBITDA(利払い・税引き・減価償却前利益)を達成できると予測されています。これは現在の市場予想の30倍以上に相当する規模です。
株主とアナリストは前向きな評価
米証券会社ウェドブッシュのアナリスト、ダン・アイブス氏は「この報酬案は、2030年までマスク氏をCEOとして引き留める上での重要なステップ」とし、テスラ株を「買い」継続、目標株価を500ドルとしています。
一方、ウィリアム・ブレアのアナリスト、ジェド・ドースハイマー氏は「マスク氏がテスラにとどまり、この壮大なビジョンの実現に邁進するというメッセージとして評価できる」とコメント。報酬案は株主総会での承認を経て正式決定となる見込みですが、可決される可能性が高いと見られています。
「モチベーション」が株価を動かす時代
CEOに対する過去最大規模のインセンティブは、その大胆さと共に「経営者のリーダーシップに市場がどこまで価値を置くか」を示す象徴的な事例です。巨大な見返りのためには、同様に巨大な成果が求められる。この“オール・オア・ナッシング”の姿勢こそが、マスク氏らしいとも言えるかもしれません。
*過去記事はこちら テスラ TSLA
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