2025年9月5日、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価が6.58%下落し、S&P500構成銘柄の中でも際立った下落率となりました。この日は他の半導体株にとっても波乱含みの一日でしたが、特にAMDの売られ方は市場の注目を集めました。
背景にはブロードコムのAIチップ受注拡大
この下落の大きな要因と見られているのが、ブロードコム(AVGO)のカスタムAIチップ事業の拡大です。同社は第4の顧客から新たに100億ドル規模の注文を獲得したと発表しました。報道によれば、この顧客はオープンAIである可能性が高いとされており、ブロードコムとの共同開発チップが来年出荷される見込みです。
この動きにより、AMDが期待されていた「エヌビディア(NVDA)に次ぐ第2の選択肢」としての地位を、ブロードコムに奪われつつあるという市場の見方が広がりました。
AMDのAIチップ戦略に対する懸念
AMDは、AI向けのアクセラレータ「MI350」「MI400」「MI4500」などの製品群を今年6月に発表し、オープンAIのサム・アルトマンCEOも登壇するなど、大きな期待が寄せられていました。しかし、業界関係者からは「評価用に購入されたシステムが実際の量産注文に結びついていない」との指摘が出ています。
特にシーポート・リサーチ・パートナーズのアナリストであるジェイ・ゴールドバーグ氏は、AMDがAIチップ市場で存在感を示すのはまだ先になると述べています。同氏によると、現状のAIチップ市場でのシェアは、エヌビディアが約70%、カスタムチップが約28%、AMDは2〜3%にとどまっているとのことです。
ハイパースケーラーは独自チップにシフト?
マイクロソフトやアマゾン、グーグルといった大手クラウド企業(いわゆるハイパースケーラー)は、依存度の高いエヌビディアからの脱却を模索しており、その選択肢としてAMDか、もしくはブロードコムと組んだ独自設計チップが検討されています。実際、グーグルはすでにTPU(Tensor Processing Unit)でブロードコムと連携しており、この傾向は今後も続く可能性があります。
長期的にはAMDにチャンスも
短期的には逆風が続くAMDですが、ゴールドバーグ氏は「MI400」シリーズ以降の新製品が、エヌビディアの次世代「ルービン」プラットフォームと競合可能なレベルになると予想しています。また、各社の独自チップ開発プロジェクトの中には失敗に終わるものも出てくる可能性があり、そうした中で2026年末から2027年にかけてAMDが再評価される局面が来るかもしれません。
まとめ
AMDは、AIチップ市場での拡大を狙っていますが、現状ではブロードコムの急伸やハイパースケーラーの自社チップ志向の前に苦戦しています。ただし、中長期的には再び注目を集める可能性も残されています。今後の製品投入と受注動向に注目が集まりそうです。
*過去記事はこちら AMD
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