エヌビディアがクラウド新興企業から自社チップを借りる理由とは?──ラムダとの15億ドル超の契約を読み解く

エヌビディア(NVDA)が生成AI時代のインフラ支配を強化するため、驚きの一手に出ました。小規模なクラウド企業「ラムダ(Lambda)」との間で、自社のAIチップを総額15億ドル以上で“レンタル”する契約を締結したのです。この契約は、エヌビディアのクラウド戦略、そしてラムダのIPOに向けた布石としても注目されています。

ラムダとは何者か?

ラムダは2012年創業のクラウド企業で、元々は自動運転技術開発者などにGPU搭載のワークステーションを販売していました。しかし近年は、エヌビディア製GPUを搭載したサーバーを設置し、AI開発企業にクラウド経由で提供する形態に大きく舵を切っています。

現在、ラムダのクラウド売上は第2四半期時点で1億1400万ドル。そのうち約半分がアマゾン(AMZN)およびマイクロソフト(MSFT)による内部利用契約です。

エヌビディアとの巨額契約「Project Comet」

2025年夏、エヌビディアはラムダから自社のAIチップ(GPU)を1万台分、総額13億ドルで4年間にわたりレンタルする契約を締結。さらに、追加で8000台分のGPUを2億ドルで借りる別契約も結ばれました。

この契約によって、エヌビディアはラムダ最大の顧客となり、ラムダの収益構造における中心的存在へと躍り出ました。また、この構造は過去にエヌビディアがコアウィーブ(CRWV)と結んだ契約とも酷似しており、「ネオクラウド」と呼ばれる新興GPUクラウド勢力への戦略的投資の一環と見られています。

なぜエヌビディアは“自社チップをレンタル”するのか?

この構造は一見奇妙に見えますが、エヌビディアのクラウドサービス「DGX Cloud」を強化するための戦略的な動きです。DGX Cloudでは、エヌビディアは外部のクラウド企業からGPUサーバーを借り、それを再販する形でAI企業などに提供しています。

さらにラムダは、アルファベット(GOOGL)のTPUを使っていたスタートアップ「Midjourney」のコードを、ブラックウェルGPUに最適化する支援も行っており、エヌビディアにとっては顧客の囲い込みを行う有力パートナーとも言えます。

IPOに向けた布石と、巨額成長見通し

ラムダは2026年までにクラウド売上を10億ドル超、2030年までには200億ドル規模に拡大する目標を掲げており、今回の契約はその実現に向けた重要なマイルストーンです。設備容量も、現状の47メガワットから2030年には3ギガワットへと、約60倍に増強する計画です。

ただし、電力確保やデータセンター取得といった現実的な課題は残っており、コアウィーブが最近約90億ドルでデータセンター企業を買収したように、ラムダも上場資金を使って垂直統合を進める可能性があります。

エヌビディアの“多面外交”が映すAIクラウド覇権の行方

現在、アマゾンやグーグル、マイクロソフトといった巨大クラウド企業は自社AIチップの開発を進め、エヌビディアへの依存度を下げようとしています。そうした状況の中で、エヌビディアはラムダやコアウィーブといった新興クラウドに投資・契約・顧客という三つの関係で深く関与し、市場支配力を維持しようとしているのです。

このような「循環的な契約構造」は、AIチップ市場における新たな競争軸を生み出しており、ラムダのIPOとその後の成長が、今後のAIクラウド業界のパワーバランスに大きな影響を及ぼす可能性があります。

*過去記事はこちら  エヌビディアNVDA

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