クラウドソフト大手のセールスフォース(CRM)は、2025年9月3日に発表した2025年度第2四半期決算で、売上・利益ともに市場予想を上回りました。しかし、次四半期の見通しが市場予想に届かず、株価は時間外取引で5.6%下落しました。
売上は2桁成長、AI事業はARR12億ドル超に
セールスフォースの第2四半期売上は102億4,000万ドルで、前年同期比10%増(為替一定ベースで9%増)となりました。市場予想(ファクトセット調べ)の101億4,000万ドルを上回りました。
決算説明会では、最高経営責任者マーク・ベニオフ氏が、データクラウドおよびAIプロダクトの成長に言及しました。これらの事業は、年間経常収益(ARR)ベースで12億ドルを突破し、前年同期比120%の急成長を遂げたと述べました。
また、今後1年間でサービス提供予定の契約額を示す「cRPO(current remaining performance obligations)」は294億ドルとなり、前年比11%増で市場予想の292億ドルを上回りました。
通期見通しは上方修正も、次四半期は慎重なガイダンス
セールスフォースは、2025年度第3四半期の売上を102億4,000万ドル〜102億9,000万ドルと予想しています。中央値は市場予想と一致しますが、投資家の期待値を大きく超えるには至りませんでした。
通期ガイダンスについては、下限値を従来の410億ドルから411億ドルに引き上げ、上限を413億ドルとする見通しを示しました。これは前年比8.5〜9%の成長(為替一定ベースで8%)に相当します。
AIへの期待と現実のギャップ、株価は年初来22%下落
セールスフォースの株価は年初来で22%下落しています。これは、AI技術が従来のソフトウェアビジネスモデルを破壊するといった懸念や、AI投資の実収益化に対する市場の慎重姿勢を反映しています。
ノースウェスタン・ミューチュアルのポートフォリオマネージャー、マット・スタッキー氏は「AIによる明確な売上成長がなければ、競争の激化を懸念する弱気派を納得させるのは難しい」と述べています。
エージェントフォース導入進むも、投資家は即効性を求める
セールスフォースは昨年導入した自律型AIエージェント「エージェントフォース」の導入拡大を図っています。第2四半期では、データクラウドおよびエージェントフォースの予約の40%以上が既存顧客によるもので、企業が初期導入後に活用範囲を拡大している様子がうかがえます。
また、AI分野での非連続的成長を狙い、データ管理企業のインフォマティカ(INFA)の買収も発表しています。
しかし、ジェフリーズのアナリストであるブレント・スリル氏は、投資家は「10%を超えるcRPO成長」や「AIの収益化の証拠」を求めていると述べており、セールスフォースの現状はその期待にはまだ届いていないとの見方も根強いです。
AIはSaaSの拡張、ベニオフCEOは強気姿勢
マーク・ベニオフ氏は、AIがソフトウェアを駆逐するという見方に対して、「顧客の現実に基づかないナンセンスだ」と反論しました。代わりに、AIはSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)の本質的な拡張であるとの認識を示しました。
同社の売上成長は前四半期の8%から10%へと加速しており、AIとの連携強化を進めながら長期的な成長を目指しているといえます。
まとめ
セールスフォースはAI分野への取り組みを本格化させ、事業の再構築と強化を進めています。しかし、投資家は単なる技術の導入ではなく、明確な売上成長や収益性への貢献を求めており、その期待とのギャップが株価に表れています。AIがどこまで企業価値を押し上げられるかが、今後の株価動向を左右する鍵となりそうです。
*過去記事「セールスフォース株が急落、決算は悪くないのになぜ?」
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