デザインソフトウェア企業のフィグマ(FIG)が2025年第2四半期決算を発表し、売上高は41%増の2億4,960万ドルとなりました。これはファクトセットのコンセンサス予想と一致しましたが、市場の期待を上回ることはできず、決算発表後の時間外取引で株価は14%以上下落しました。
初の黒字化達成も、市場は冷静
フィグマは前年の8億2,790万ドルの損失(1株当たり4.39ドル)から黒字転換し、今四半期は2,820万ドルの利益を計上しました。1株当たりでは損益分岐点を達成しています。ただし、利益についてはファクトセットによる予想が不十分だったため、市場のサプライズとしては機能しなかったようです。
AIへの積極投資を表明
最高経営責任者のディラン・フィールド氏はアナリスト向けの説明会で、AI分野への「大きな賭け」に備えた投資を続ける意向を明言しました。具体的には、生成AIを活用した「Figma Make」やプレゼンテーションツール「Figma Slides」など、AIを活用した新製品群の紹介も行われました。
同氏は「全員に受け入れられるとは限らないが、目の前には大きなチャンスがある。これを確実にものにしていく」と強調しました。
ガイダンスは前向き、だが過熱感も
第3四半期の売上ガイダンスは2億6,300万ドル〜2億6,500万ドルとされ、下限でもファクトセット予想の2億6,200万ドルを上回っています。また通期ガイダンスは102億1000万ドル〜102億5000万ドルとされ、中央値は市場予想(102億2000万ドル)とほぼ一致しました。
IPO後の急騰とその反動
フィグマは2025年7月31日に1株33ドルで新規株式公開を行い、IPO後すぐに株価は142.92ドルまで上昇しましたが、今回の決算発表当日は68.13ドルで終了しており、上場来高値から半値以下に落ち込んでいます。
IPOによる調達額は12億ドルを超えましたが、市場評価とのギャップが今回の株価急落につながったと考えられます。
財務体質は健全、製品のクロスセルも進展
最高財務責任者のプラヴィール・メルワニ氏は、顧客のうち80%以上が2製品以上、3製品以上を使っている顧客は3分の2に達すると説明しました。ARR(年間経常収益)で1万ドル以上支払う顧客は1万2,000社、10万ドル以上支払う顧客は1,100社を超えています。
同社は現在16億ドルの現金を保有しており、AIや営業戦略などの成長分野に柔軟に投資していく方針を示しました。
モルガン・スタンレーは中立評価
先週、モルガン・スタンレーのアナリストであるエリザベス・ポーター氏は、フィグマに対して80ドルの目標株価を設定し、「イノベーションの実績」「市場でのリーダーシップ」「強固なユニットエコノミクス」などを評価しました。
ただし、35倍以上のEV/売上高倍率に対して「すでに十分織り込まれている」として、「イコールウェイト(中立)」の評価を下しています。
アドビによる買収失敗も背景に
2022年からアドビ(ADBE)が進めていたフィグマの買収計画は、規制当局からの圧力を受け、2023年12月に正式に中止されました。この背景も、現在の投資家心理に影響していると考えられます。
まとめ:成長は続くが、投資家は慎重姿勢
フィグマは急成長を遂げている一方で、IPO後の高いバリュエーションやAIへの積極投資に対して、市場は慎重な姿勢を崩していません。今後の継続的な成長と収益性のバランスが問われる局面に入っています。
*過去記事「フィグマ決算はソフトウェア業界とIPO市場の試金石に」
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