2025年9月2日、米連邦地裁が「米国対グーグル」訴訟における救済措置を発表し、アルファベット(GOOGL)の株価が時間外取引で7%上昇しました。裁判所が示した対応が限定的なものであったことが、投資家心理の改善につながったとみられています。
クローム売却義務は回避、アップルとの契約も継続可能に
判決を下したのは米連邦地裁のアミット・メータ判事です。最も注目されたポイントの一つは、グーグルが「Chromeブラウザを売却する必要がない」と判断されたことです。
また、アップル(AAPL)との間で行っている、iPhoneなどのデフォルト検索エンジンとしてグーグルを設定するための支払い契約についても、禁止はされませんでした。将来的に再検討される可能性は残るものの、現時点ではグーグルにとって好意的な判決となりました。
さらに、グーグルがChromeやGoogle検索、Google Assistant、Geminiアプリなどを事前インストールする目的で、パートナーに支払いを行うことも継続可能とされています。
独占的な契約は禁止、検索インデックスの共有も命令
一方で、グーグルに対していくつかの制限も課されました。特に、検索サービスやChrome、Google Assistant、Geminiに関連する「独占的契約を結ぶこと」は禁止されます。
さらに、検索インデックスの一部データを競合他社と共有するよう命じられました。これにより、パープレキシティやオープンAIなどの新興AI検索サービスが恩恵を受ける可能性があります。
AIの台頭が訴訟の展開を左右
今回の判決では、2024年8月に出された「グーグルは検索とテキスト広告において独占的地位を持つ」との認定を踏まえつつも、生成AIの影響が重要な要素として取り上げられました。
メータ判事は判決文の中で、「生成AIの登場はこの訴訟の流れを変えた」と述べています。責任審理の段階ではAIを重大な脅威とみなす証言はありませんでしたが、救済措置に関する審理では最初の証人がAIを中心的な競争要因と認識していたという点を強調しました。
2025年にはインターネット検索の利用が減少しており、ChatGPTやパープレキシティなどのAIチャットボットによる情報収集が主流になりつつあります。
グーグルはAI戦略を強化、他のテック大手も競争を激化
グーグルは競争環境の変化に対応し、検索ページにAI Overviewsを導入したほか、「AIモード」と呼ばれる会話型の検索機能も展開しています。
一方、マイクロソフト(MSFT)やメタ・プラットフォームズ(META)といった他のテック大手も、AIインフラへの巨額投資を通じて自社のAIチャットボット(CopilotやMeta AIなど)を強化しています。
メータ判事は「AI分野への資金流入のスピードと規模は驚異的であり、これらの企業は従来の検索企業よりもはるかに有利な立場でグーグルと競争できる」と記しています。
アルファベットとアップルの株価も上昇
今回の判決を受けて、アルファベットの株価は時間外取引で7%上昇しました。アップルも同様に、グーグルからの支払い契約が維持されるとの見通しから、3%近く上昇しています。
グーグルは判決に対して控訴するかどうかは明らかにしていないものの、現段階では現状の競争環境を反映した合理的な判断と受け止めているようです。
AIによる検索体験の進化が進む中、検索市場の競争は新たな段階へ
今後、生成AIの進化が検索市場をどのように変えていくのか、そして伝統的な検索エンジン企業と新興AI企業との競争がどう展開するのかが注目されます。
2025年は検索の概念自体が再定義される転換期となる可能性があります。
*過去記事 アルファベット GOOGL
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