SAPは“欧州版マグニフィセント・セブン”か?注目集める独ソフト大手の実力

  • 2025年9月1日
  • 2025年9月1日
  • BS余話

2025年、ドイツ株式市場でひときわ存在感を示す企業があります。欧州のテック分野では例外的な強さを見せるSAP(SAP)です。米国の「マグニフィセント・セブン」に匹敵する存在として、いま注目を集めています。

ドイツDAXの牽引役となったSAP

2024年、SAPはドイツのDAX指数の上昇の約半分を占めたとされるほど株価が好調でした。過去3年間で株価は約3倍に上昇し、2025年も好スタートを切ったものの、7月の第2四半期決算後には一時的な調整が入りました。ドル安とクラウド部門の成長鈍化への懸念が原因とされています。

しかし、この10%程度の下落は、むしろ買い場になる可能性があると指摘されています。理由として、今後3年間にわたる安定した利益成長の予測や、米国株とは異なる地域・市場での収益基盤、そして高い顧客維持率による収益の安定性が挙げられます。

ERP市場でトップを走る

SAPは、企業の人事、会計、在庫管理などの基幹業務を支えるERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)に特化したソフトウェア企業です。顧客関係管理(CRM)に注力するセールスフォース(CRM)とは異なり、社内の「裏方」を担う存在です。

市場調査会社ガートナーによると、SAPは世界のERP市場で17%のシェアを持ち、ワークデイ(WDAY)の13%、オラクル(ORCL)の10%を上回っています。2027年までにこの市場は年率12%で成長し、総額6,700億ドル規模に達すると見込まれています。

クラウドとAIで中小企業開拓が加速

かつては導入に多額の初期費用が必要だったSAPですが、近年のクラウド化により、安定した収益と高い利益率を実現しています。2020年からCEOクリスチャン・クライン氏のもとで進められてきたクラウドシフトにより、売上成長率は年率10%ペースに回復しました。

さらにAIの活用が加速し、導入の複雑さやコストの高さに悩んでいた中小企業にも広がりを見せています。2024年時点で、顧客の約8割が中小企業となり、売上の86%がリカーリング収益(継続課金)で構成され、顧客維持率は96%という驚異的な数字を記録しています。

地理的分散でリスクを軽減

SAPの売上は欧州45%、アメリカ40%、アジア太平洋15%と、地域的にもバランスの取れた構成です。ドル安の影響を受ける側面はあるものの、特定地域への依存度が低いため、景気後退リスクへの耐性もあると評価されています。

第2四半期決算の波乱と今後の見通し

2025年7月22日に発表された第2四半期決算では、利益面では予想を上回ったものの、売上とクラウド収益で市場予想を下回り、一時的な株価下落を招きました。しかし、クラウドの受注残高は前年比28%増(為替一定ベース)となっており、今後の成長加速が期待されています。

ファクトセットによると、1株利益は2028年には12ドル超への成長が予想されており、2025年通期では最大30%の営業利益成長をガイダンスで維持しています。

懸念材料は地政学リスクとバリュエーション

トランプ大統領による貿易政策の不確実性が最大の外部リスクです。CFOドミニク・アサム氏も「グローバル化の後退や高関税の導入は世界経済に大きな打撃を与える」としつつも、SAPの製品が「未来志向で企業のレジリエンスを高める」ものであると強調しています。

また、SAPのPER(株価収益率)は46倍と、テスラを除くマグニフィセント・セブン銘柄を上回る高水準に見えますが、これは株式報酬費用を現金支出として処理する独自の会計基準による見かけ上のものです。

現金フロー・ベースで見ると、SAPのバリュエーションは業界平均に近い水準に落ち着きます。ザイオン・リサーチ・グループの試算では、株式報酬調整後のフリーキャッシュフロー倍率は56倍で、エヌビディア(NVDA)やマイクロソフト(MSFT)の53倍、オラクルの35倍の間に位置します。

AI戦略と成長性が評価のカギ

ドイツ銀行のアナリストであるヨハネス・シャラー氏は、SAPに「買い」評価を付与し、目標株価を364ユーロ(約426ドル)としています。現在株価(237ユーロ前後)から50%以上の上昇余地があると見積もられています。

理由としては、「売上成長が競合よりやや高く、利益・キャッシュフローの伸びが群を抜いており、AI戦略でも先行している」点を挙げています。

まとめ:SAPは米国テック株と肩を並べる存在に

欧州発のSAPは、クラウド・AI・ERPの三位一体で中長期的な成長ストーリーを描いています。米国のマグニフィセント・セブンに乗り遅れた投資家にとって、SAPは地理的・業種的に分散効果をもたらす有力な選択肢となるかもしれません。

*過去記事「SAPが欧州最大企業に、株価急騰の背景と今後の展望

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