米テック系メディア「The Information」が2025年8月21日付で報じたところによると、エヌビディア(NVDA)は中国市場向けに開発したAIチップ「H20」の生産を一部停止したとのことです。関係者によれば、同社はサプライヤーに対し、H20関連の製造工程の中断を指示したといいます。
背景にあるのは中国政府の購入禁止通達
今回の措置は、中国政府が国内のテクノロジー企業に対し、H20チップの購入を控えるよう指示したことが背景にあります。中国当局は、同チップに米国へ情報を送信する「バックドア」が仕込まれている可能性を懸念しており、代わりにファーウェイ製をはじめとする国産AIチップの使用を推奨していると報じられています。
米政府が販売再開を許可した直後の停止
エヌビディアはこれまで、米国の輸出規制に対応するかたちで、中国向けに性能を制限したH20チップを開発してきました。しかし2025年春には、トランプ政権によって販売が一時禁止に。
その後、エヌビディアが売上の15%を米政府に還元することを条件に販売再開が許可され、中国企業からは約70万個のH20が注文されたと伝えられています。
これを受けて同社は、韓国サムスンに高帯域幅メモリの追加注文を行い、台湾TSMCからの半完成品を米アリゾナ州のAmkor社へ移送するなど、供給体制を強化していました。
チップは宙に浮き、供給網にも影響
ところが、今回の中国政府の通達により、Amkor社には未完成チップが滞留し、サムスンもエヌビディアから生産中止の通知を受け取ったと報じられています。
エヌビディアは、「市場環境に応じてサプライチェーンを調整している」とコメントしつつ、「当社のチップにバックドアは存在しない」と強く否定しています。
中国市場の比率低下と戦略の再構築
エヌビディアの売上に占める中国の比率は、2022年度の26%から2025年度には13%まで低下しています。今回のH20チップ生産停止は、同社が米中対立という地政学リスクの中で、事業戦略の再構築を迫られている現実を改めて浮き彫りにする出来事といえます。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA
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