AIの個性問題を象徴するGPT-5騒動とその影響

  • 2025年8月18日
  • 2025年8月18日
  • BS余話

米テック系メディア「The Information」は、2025年8月16日付の記事で、AI業界が直面する新たな課題について紹介しています。これまでAIの進化においては「いかに賢くするか」が主な焦点でしたが、今後は「どのような個性を持たせるか」が重要になるという指摘です。

サム・アルトマンとChatGPTの個性調整

オープンAIのサム・アルトマン氏は、ChatGPTの「性格」を調整する必要性に直面しています。ある時は「親しみやすさが足りない」と批判され、またある時は「過剰に温かすぎる」と指摘されました。つまり、万人受けするちょうど良いバランスを模索しているのです。アルトマン氏の狙いは、世界中の幅広いユーザーに利用されるAIを提供することにあります。

GPT-5リリースとユーザーの反発

2025年8月7日、オープンAIはGPT-5をデフォルトモデルとして導入しました。GPT-5は「リアルタイムルーター」によってクエリ内容に応じて自動的に応答スタイルを切り替える統合型モデルで、技術的な進化を示すものでした。その一方で、GPT-4oやo3、o4-mini、GPT-4.1、4.5などのモデルが一時的に非表示または廃止されたことから、多くのユーザーが不満を抱きました。

特にGPT-5については「冷たく感じられる」「親しみが欠ける」「会話が機械的になった」といった批判が多数寄せられました。GPT-4oを「信頼できる友のようだった」と感じていた利用者にとって、その突然の置き換えは大きな喪失感を伴い、広範な反発を呼んだのです。

オープンAIの対応と方針転換

こうした声を受けて、サム・アルトマン氏は「GPT-4oの置き換えがユーザーへの影響を十分に考慮していなかった」と認め、GPT-4oを再導入する方針を示しました。結果として、有料プラン(Plus、Pro、Enterpriseなど)のユーザーは再びモデルピッカーからGPT-4oを選択できるようになり、多くのメディアで「デフォルトとして復活した」と報じられました。

同時に、GPT-5には「Auto」「Fast」「Thinking」などのモードが追加され、応答速度や深さを調整できるようになりました。「Thinking」モードは週あたり最大3,000メッセージまで利用可能とする改善も行われています。また、モデルピッカーには「Show additional models」というトグルが設けられ、GPT-4oだけでなく、o3や4.1、GPT-5 Thinking miniなどにもアクセス可能になりました。

さらに、GPT-5のデフォルトの性格も「より温かみのある表現」になるよう調整が進められており、ただしGPT-4oのような強い個性ではなく「多くの人にとって心地よい中立性」を目指す方向性が打ち出されています。加えて、今後は旧モデルの廃止に際して事前通知を行うポリシーを採用することも明らかにされました。

普遍的な魅力を持つAIの難しさ

記事では、「普遍的に愛される人間が存在しないように、普遍的に好まれるAIを作るのは難しい」と指摘されています。現在の業界の多くは、魅力が強すぎず弱すぎず、万人に受け入れられる「ゴルディロックス的なAI」を目指しています。しかし、競争が激化する中で、この方向性だけで差別化するのは難しいという見方が広がっています。

個性が差別化の鍵に

The Informationの記事によると、今後はAIに明確な個性を与えることが、差別化の重要な手段になる可能性があります。例えば、イーロン・マスク氏のGrokが「定義可能でマーケット性のある個性」を打ち出したのは賢明な戦略だとしています。ユーザーはAIの性格を通じて自らのアイデンティティを投影し、車や時計のように「どのAIを使うか」が自己表現の一部になる未来が訪れるかもしれません。


このように「AIの個性問題」は、単なる技術的な課題ではなく、ユーザー体験や市場戦略にも直結する重要テーマになっています。特にGPT-5をめぐる批判と、その後のGPT-4o再導入という経緯は、この問題が現在進行形の課題であることを如実に示しており、今後どのような方向性が取られるのか大きな注目を集めています。

*過去記事「GPT-5登場でソフトウェア業界はどう変わるのか

🎧この記事の内容は音声でもお楽しみいただけます。コメンテーター二人のやり取りで分かりやすく解説していますので、ぜひご利用ください。👇

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