イーライ・リリー（LLY）が英国で人気の減量薬の価格を大幅に引き上げると発表したことで、同業のノボ・ノルディスク（NVO）株にも追い風となる可能性があります。両社はGLP-1と呼ばれる糖尿病・減量薬市場をリードしており、一方の動きがもう一方に影響する傾向があります。
英国での大幅値上げとノボ・ノルディスクへの影響
イーライ・リリーは8月15日、英国政府と合意の上で、最高用量の1か月分の価格を170％引き上げ、低用量も96％から138％の値上げを行うと発表しました。この値上げは、患者が代替薬としてノボ・ノルディスクの製品を選択する動きを促す可能性があります。
ノボ・ノルディスクは「英国での提供内容（価格を含む）を変更する予定はない」とコメントしています。
価格引き上げが市場全体にもたらす影響
ドイツ銀行のアナリスト、ジェームズ・シン氏は、この値上げがGLP-1クラス全体の価格環境を改善する可能性があると指摘しています。これは、イーライ・リリーの経口減量薬オルフォグリプロンやノボ・ノルディスクの競合製品にも好影響を及ぼす可能性があります。
この発表を受け、ノボ・ノルディスクの米国預託証券は一時2％高の51.95ドル、イーライ・リリー株も3.2％高の704.45ルまで上昇しました。
米国市場と政治的背景
今回の値上げは、トランプ大統領が掲げる処方薬価格引き下げ政策の中で行われました。トランプ大統領は「米国の薬価を他の先進国と同等まで下げるべきだ」と繰り返し主張しています。
イーライ・リリーは「欧州など他の先進国での薬価が上がることによって、米国での薬価引き下げが可能になる」と述べています。
米国での価格引き下げの可能性は低いとの見方
バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ティム・アンダーソン氏は、今回の動きが米国での実質的な値下げにつながる可能性は低いと分析しています。同氏は、製薬会社が直接消費者に薬を販売するのはPR的な意味合いが強く、大手保険会社に提供している価格とほぼ同じ水準になる可能性が高いと述べています。
結果として、英国での値上げは短期的にはノボ・ノルディスク株にプラス要因となる一方、米国市場での薬価動向は引き続き不透明な状況が続く見通しです。
＊過去記事「イーライ・リリー経口肥満薬、効果は予想下回るも市場拡大に期待」
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