米国では、株式をブロックチェーン上で24時間取引可能にする「トークン化証券」が、次世代の金融インフラとして注目を集めています。コインベースやクラーケンなどの暗号資産プラットフォームは、取引コストの削減や決済速度の向上といった利点を強調。一方で、伝統的な金融業界からは「市場の分断」や「規制回避」といった懸念も指摘されています。
なぜ今、“トークン化証券”が注目されているのか?
- 高い流動性と効率性
ブロックチェーン上で株式や債券などの証券を扱うことで、24時間365日取引が可能になり、決済が即時化。取引コストの低減も期待できます。 - RWAトークン市場の拡大
不動産や美術品などの実物資産をブロックチェーン化する「RWA(Real World Asset)トークン」市場は、2025年7月時点で約250億ドルに達し、前年比で2倍以上の成長を遂げています。 - 規制改革の動き
トークン化証券の普及に向け、規制環境の見直しや法的整備の必要性が高まっています。特にSECによる制度設計が、今後の市場拡大のカギとなります。
米国での現状
- 主要企業の動き
コインベースは株式のトークン化を視野に入れた実証実験を検討中で、クラーケンやロビンフッドも非上場資産や特定証券のトークン化を推進しています(クラーケンは、米国外の投資家向けにアップル、テスラ、エヌビディアなどのトークン化株式を提供する計画を発表)。こうした動きは、暗号資産取引所が証券取引の一部を担う可能性を示しています。 - 規制当局のスタンス
現時点では、米国でトークン化証券を全面的に解禁する法的枠組みは存在しません。しかし、金融業界や議会内では「透明性を確保した上での解禁」を求める声が強まり、規制環境は改善傾向にあります。 - 懸念点と課題
証券業界団体SIFMAは、制度変更にあたって投資家保護を最優先するようSECに要請。また、市場の分断や清算リスク、サイバーセキュリティ対策といった課題も議論されています。
まとめ:米国発の金融変革は加速するか
米国では、トークン化証券が「証券取引のデジタルシフト」を加速させる可能性が高まっています。制度設計の明確化やインフラ整備が進めば、株式や債券の取引はさらに効率化し、投資家層の拡大につながるでしょう。今後数年は、規制当局と市場プレイヤーの動向が世界的な注目を集めることになりそうです。
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