デジタル広告市場で圧倒的な存在感を誇るグーグルに対し、広告主や出版社から不満の声が高まっています。それにもかかわらず、彼らはグーグルから離れることができていません。米テック系メディア「The Information」の2025年8月5日付記事によると、その理由は「他に有効な選択肢がないから」です。
オーガニック流入減少に対抗する“有料広告”の重要性
出版社の中には、オーガニック検索からの流入が減少していると指摘する声もあります。原因として、ChatGPTの普及やグーグルの検索結果にAI要約が追加された影響が挙げられています。実際、Pew Researchの調査によれば、AIサマリーが表示された検索結果ではリンクのクリック率が下がる傾向が見られたといいます。
こうした状況に直面し、多くの企業は検索広告への支出を増やしてトラフィック減少を補おうとしているとのことです。例えば、オンライン教育企業Strideは、オーガニック検索流入の減少を受けて、有料検索広告の強化を検討しました。
広告の“効率”は低下、それでもグーグルは外せない
検索広告の費用対効果にも変化が見られています。マーケティングエージェンシーWarschawskiの幹部は、「夜用クリーム」などの一般的な検索語句に対して広告を出しているものの、実際には別ブランド名の検索に広告が表示されてしまうケースが増えていると指摘します。その結果、高額商品を求めていない層に広告が届いてしまい、広告効率が悪化しているとのことです。
それでも、広告主はグーグル広告を続けています。他の広告プラットフォームよりも高いリターンが得られると考えられているためです。
消費者行動の変化とChatGPTの影響
こうした問題の背景には、消費者行動の変化があるとみられています。従来のように「スキンケアクリーム」と検索するのではなく、ChatGPTなどで情報を収集してから、グーグルで特定ブランドを直接検索する傾向が強まっているというのです。
これにより、グーグル上では「一般的な商品探索の検索」が減少し、「ブランド名検索」に広告枠が集中しやすくなっていると指摘されています。実際、広告代理店Tinuitiのデータでは、企業自身のブランド名に出稿する広告単価が前年同期比で16%上昇したのに対し、それ以外の検索語句では3%の上昇にとどまったそうです。
グーグルの反論と今後の展望
グーグル側は、AI機能が検索体験を向上させており、検索回数も依然として増加傾向にあると反論しています。スンダー・ピチャイCEOは第2四半期の決算説明会で「全体として検索クエリも商業クエリも増加しており、AI機能がその成長を後押ししている」と述べました。
ただし、同社は今後、独占禁止法違反に関する裁判の判決を受けて、検索ビジネスの分割や競合へのデータ開示といった大きな是正措置を求められる可能性もあります。広告主と出版社がグーグルに依存し続ける構造が、法的な転機を迎えるかもしれません。
*過去記事 アルファベット GOOGL
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