2025年の米国では、企業の合併・買収(M&A)が急速に活性化しています。ドナルド・トランプ大統領の再登場による関税政策の緩和と、規制環境の変化が背景にあると報じられています。
年初は低調に推移していたM&A活動ですが、4月以降の巻き返しは鮮烈でした。2025年4月8日から7月22日までの間に成立した取引総額は1兆ドルを超え、前年同期比で34%の増加となりました。年間ベースでは3.8兆ドル規模に達する可能性もあり、これは昨年比で8%の増加見込みとされています。
成長領域でのM&Aが加速
特に注目されているのが、以下の3つの分野です。
テクノロジー分野
アルファベット(GOOGL)が32億ドルでセキュリティ企業Wizを、セールスフォース(CRM)がインフォマティカを80億ドルで買収したように、クラウドやAI領域での取引が活発化しています。買収側としては、マイクロソフト(MSFT)、アマゾン(AMZN)、オラクル(ORCL)といった大手IT企業も引き続き動きを見せています。
医薬・バイオテクノロジー分野
製薬大手がパイプラインの強化を図る中、小規模バイオ企業が注目を集めています。イーライ・リリー(LLY)やメルク(MRK)による買収も記憶に新しく、長期的な売上見込みと第2相試験での好成績を持つ企業がターゲットとされています。
インフラ・産業セクター
鉄道、建設、廃棄物処理といった産業系M&Aも活発です。ユニオン・パシフィック(UNP)とノーフォーク・サザン(NSC)による大型合併は象徴的な事例といえます。
*関連記事「ユニオン・パシフィック、史上最大の鉄道合併を発表!米国初の本格大陸横断鉄道が誕生」
注目のM&A買収候補銘柄一覧
以下は、今後買収のターゲットになる可能性があるとされる企業の一覧です。業種別に整理しています。
テクノロジー関連
企業名 | ティッカー | 概要 |
---|---|---|
C3.ai | AI | AIアプリ開発プラットフォームを提供。株価は上場時から約80%下落。 |
ドキュサイン | DOCU | 電子署名と契約管理サービスを展開。競争激化と成長鈍化が課題。 |
ドロップボックス | DBX | クラウドストレージサービス大手。SaaS市場での差別化が求められている。 |
リングセントラル | RNG | クラウド電話・ビデオ会議などUCaaS提供。収益性改善が焦点。 |
ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ | ZM | ビデオ会議プラットフォームで急成長も、成長鈍化と競争環境が課題。 |
医薬・バイオ関連
企業名 | ティッカー | 概要 |
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バイキング・セラピューティクス | VKTX | GLP-1関連の肥満治療薬を開発中。時価総額は約38億ドル。 |
サイトカイネティクス | CYTK | 心不全など筋疾患向けの治療薬候補を保有。フェーズ2結果が良好。 |
スカラー・ロック・ホールディング | SRRK | 筋骨格系疾患向けの抗体医薬を開発。成長期待が高い小型バイオ企業。 |
インフラ・産業関連
企業名 | ティッカー | 概要 |
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リフト | LYFT | 米国ライドシェア大手。ウーバーに対抗し業績立て直し中。 |
コンストラクション・パートナーズ | ROAD | 道路建設・補修を手がける企業。公共インフラ投資の恩恵を受ける可能性あり。 |
カセラ・ウェイスト・システムズ | CWST | 廃棄物処理・リサイクル事業を展開。直近の決算で業績予想未達が目立つ。 |
投資家にとっての意味
M&Aの波はしばしば、買収側・被買収側の両方にとって株価の追い風となります。今後12か月にわたってM&Aの活発化が続くと見られており、投資家にとっては対象企業の選定がますます重要となってきそうです。
今後も、「M&Aのターゲット」になり得る企業を見極めることが、株式投資における一つの鍵となるかもしれません。