2025年8月1日、米投資メディア「バロンズ」は、グラハム・ホールディングス(GHC)について、「保有する事業の合計価値が現在の時価総額を大きく上回っている」とする分析記事を掲載しました。
グラハム・ホールディングスは、かつてワシントン・ポストを保有していたことで知られ、現在は教育事業のKaplanをはじめ、テレビ局、自動車ディーラー、製造業、レストラン、医療サービスなど多岐にわたるビジネスを展開しています。その多様性から「小さなバークシャー・ハサウェイ」とも称される同社ですが、株価は保有資産に対して大きなディスカウントで取引されているとの見方が広がっています。
潜在的な株価上昇のきっかけとは
記事では、グラハム・ホールディングスの価値を引き上げる可能性のある要素として、以下の3点が挙げられています。
- テレビ局部門のスピンオフ
ヒューストンやデトロイトなど、大きな市場に拠点を持つ放送局を分離・上場することで、最大15億ドルの価値があるとされます。 - 医療事業の成長
在宅医療やホスピスサービスを含むヘルスケア事業は、2025年上半期に売上が前年比36%増、営業利益も倍増となり、こちらも最大15億ドル規模の価値が見込まれています。 - 教育事業Kaplanの業績好調
収益の柱となっているKaplanは、オンライン大学(Purdue)や試験対策事業を展開しており、2025年上半期には利益が31%増加しました。推定価値は20億ドルに達する可能性があります。
複雑な財務構造と割安評価
グラハム・ホールディングスは複雑な財務構造を持つため、四半期ごとの決算内容を把握するのが難しく、アナリストのカバレッジも非常に限定的です。また、四半期ごとの電話会議やガイダンスを行わず、まるで非上場企業のような運営スタイルを取っています。
それでも、記事では同社の保有資産や事業の価値を合算すると、およそ69億ドルに達し、現在の時価総額(約42億ドル)を大きく上回ると推計しています。つまり、株価に換算すると1株あたり1,500ドル以上の価値があるにもかかわらず、現在は約950ドルで取引されている状況です。
長期投資家にとって魅力的な1銘柄
グラハム・ホールディングスの経営方針は「キャッシュフローの拡大と株式数の削減を目指す」こと。長期的な資本成長を重視する投資家にとっては、隠れた資産価値が将来的に顕在化する可能性がある銘柄として注目されています。
バロンズは、同社は過去にケーブルテレビ事業(Cable One)をスピンオフした実績もあり、今後の企業再編や資産売却によって、株主価値がさらに引き出される余地があると指摘しています。
投資判断には慎重さが求められますが、「分かりにくさ」が逆に割安さの源泉となっている可能性もあるグラハム・ホールディングス。複雑な企業構造の中に眠る「宝の山」に、目を向ける価値がありそうです。