仮想通貨取引プラットフォームを展開するコインベース・グローバル(COIN)が2025年7月31日に発表した第2四半期決算は、売上が市場予想を下回り、株価は時間外取引で9%超下落しました。収益構造の変化やセキュリティ対応のコスト増が影響しています。
売上は前年同期比で26%減少
第2四半期の売上は15億ドルで、市場予想をわずかに下回りました。特に注目されたトランザクション収益は7億6,430万ドルと、予想されていた8億1,400万ドルを下回る結果となりました。これは前年同期比で39%の減少となり、ユーザーの取引活動の鈍化が浮き彫りになっています。
純利益は一時的要因で増加、調整後では小幅黒字
純利益は15億ドルと見かけ上は大幅な黒字となりましたが、その内訳の大部分(15億ドル)が戦略的投資による利益で、さらに暗号資産評価益が3億6,200万ドル含まれています。これらを除いた調整後の純利益は3,300万ドルでした。
サイバー攻撃でコスト増、年間最大4億ドルの可能性
営業費用は前年同期比で15%増の15億ドルとなりました。特に5月に発生した大規模なデータ窃取事件に関連して、3億700万ドルのコストが発生。この事件では、海外のサポートスタッフが買収される形でサイバー攻撃が行われ、数万人の顧客が被害を受けたとされています。今後、この攻撃による総コストは最大で4億ドルに達する可能性があります。
規制整備が進展、「Clarity法」と「Genius法」が成立
7月は政策面でも重要な動きがありました。米国初の暗号資産に関する包括的な連邦法「Genius法」が可決され、ステーブルコイン発行者への明確なルールが整備されました。さらに、「Clarity法」により暗号資産の市場構造に関するフレームワークが設けられたことで、コインベースにとっては将来的なビジネス拡大の土台が整った形です。
第3四半期は好調な滑り出し
最高財務責任者(CFO)のアリーシャ・ハース氏によると、7月のトランザクション収益は3億6,000万ドルと、四半期ベースで力強いスタートを切っています。さらに、サブスクリプションおよびサービス収益は、平均的な暗号資産価格とステーブルコイン収益の増加を背景に、6億6,500万ドルから7億4,500万ドルの間で過去最高を記録する見通しです。
JPモルガンなどと提携し、暗号資産の普及促進へ
コインベースはJPモルガンチェースと提携し、同行のクレジットカード利用者がコインベース上でUSDC(米ドル連動ステーブルコイン)への報酬交換が可能になりました。さらに、PNC銀行と連携し、同行の顧客が仮想通貨の取引をコインベースを通じて実行できるようにする取り組みも始まっています。
また、アメリカン・エキスプレスとの提携により、最大4%のビットコイン還元が受けられる「コインベース・ワン・カード」も発表されました。
新サービス「エブリシング・エクスチェンジ」へ進化
ハース氏は、コインベースの主力取引アプリを「エブリシング・エクスチェンジ」へと拡張し、トークン化された実世界資産や株式、デリバティブ、予測市場、未上場トークンなどを一つのプラットフォーム上で取引できるようにする方針を明らかにしました。
デリバティブ市場への進出も強化
今年末までには、29億ドルで買収を進めている暗号資産オプション取引所「デリビット」の買収完了が予定されています。これにより、コインベースは暗号デリバティブ分野でのさらなる市場拡大を目指します。
株価は年初来で52%上昇も、今後の動向に注目
2025年に入ってからコインベースの株価は52%上昇し、現在の時価総額は961億5,000万ドルに達しています。また、同社はS&P500指数(SPX)に新規採用されるなど、存在感を高めています。ただし、今回の決算と株価下落を受けて、今後の成長戦略と収益性がより厳しく問われる局面に入ったといえそうです。
仮想通貨ビットコイン(BTCUSD)の価格は7月21日に過去最高値となる11万9,963ドルを記録しており、市場環境としては依然として追い風が吹いています。コインベースがこれを活かし、どこまで成長を遂げられるかが注目されます。
*過去記事「コインベース株、好調の反動か?アナリストが利益確定を推奨」