デザインソフトウェア企業のフィグマ(Figma)が、2025年7月31日にニューヨーク証券取引所に上場します。ティッカーは「FIG」、公開価格は1株あたり33ドルに設定され、企業価値は約193億ドル(約2.9兆円)となります。
IPO市場に再び熱気 期待膨らむ初値上昇
フィグマは今回の新規株式公開で、合計36.9百万株を売り出し、12億ドル以上の資金を調達する見込みです。当初提示していた価格レンジ25~28ドルを2度にわたって引き上げており、投資家の需要が非常に高かったことがうかがえます。
上場初日の株価上昇が期待されており、同様に注目されたIPO銘柄であるサークル・インターネット・グループ(CRCL)やチャイム・ファイナンシャル(CHYM)、エアロ・グループ・ホールディングス(AIRO)の好調な上場パフォーマンスに続く動きが注目されます。
SaaSの代表格、競合を寄せ付けない地位
市場調査会社PitchBookのアナリストは、フィグマを「製品デザイン分野における世代を代表するSaaS企業」と評価しています。これまでにIndex Ventures、Greylock Partners、Sequoia Capitalなどシリコンバレーの名だたるVCが出資しており、その支援体制も万全です。
2024年の売上は前年比48%増の7億4900万ドル、2025年第1四半期にはさらに46%の増収となっています。ただし、収益面では安定しておらず、2023年にはアドビ(ADBE)からの買収契約破棄に伴う違約金10億ドルによって黒字を計上した一方、2024年には7億3200万ドルの赤字に転じました。
ビットコイン投資にも注目 フィグマ独自の財務戦略
フィグマは財務戦略として暗号資産にも投資しています。2024年3月にはビットワイズ・ビットコインETFに5500万ドルを投じ、2025年3月末には評価額が6950万ドルまで上昇しています。さらに、ステーブルコイン「USDコイン」を3000万ドル分購入し、将来的にはビットコインに再投資する方針も明らかにしています。
ビットコインの価格が過去最高に近い水準にある現在、こうした暗号資産へのエクスポージャーも投資家の関心を引きつけています。
今後の懸念材料はAIの進化による影響
一方で懸念材料もあります。生成AIの進化によって、フィグマのソフトウェアモデルが今後影響を受ける可能性が指摘されています。アドビの株価が低迷している要因の一つとしても、こうした構造変化への不安が挙げられています。
今後、AIがもたらす影響をどこまで吸収し、事業モデルを強化できるかが、IPO後の評価を大きく左右することになるでしょう。
IPO市場の復活を象徴する案件に
それでも、今回のフィグマ上場は、低迷していたIPO市場が活況を取り戻すきっかけとして注目されています。直近のテックIPOの好調な動きを背景に、フィグマは次なる主役となる可能性があります。