半導体設計大手のアーム・ホールディングス(ARM)が2025年7月30日に発表した2026年度第1四半期決算は、売上・利益ともに市場予想をおおむね満たしたものの、株価は時間外取引で約8.7%下落しました。過去3ヶ月で株価が約43%上昇していたこともあり、投資家の期待が高まっていた中での「控えめな見通し」が失望を招いた形です。
決算は予想並みも、見通しに弱さ
アームは四半期売上を10億5000万ドルと発表し、前年同期比で12%増加しました。これは同社にとって過去2番目に高い売上で、調整後の1株利益(EPS)は35セントと、市場のコンセンサス予想と一致しています。
しかし、第2四半期のガイダンスとして提示された売上見通しは10億1000万〜11億1000万ドル、EPSは29セント〜37セントとされており、いずれも中央値では市場予想に届かない内容でした。
スマートフォン分野の成長に陰り
アームの主力事業であるロイヤリティ収入は前年同期比で25%増加しましたが、これは以前に同社が示していたガイダンスレンジの下限にとどまっており、特にスマートフォン分野での伸びが想定を下回ったことが明らかにされています。
フルチップソリューションへの進出可能性に言及
今回の決算発表では、アームが将来的にアプリケーション・スペシフィック・インテグレーテッド・サーキット(ASIC)などの分野に進出する可能性についてもコメントがありました。現時点では「具体的に発表できることはない」としつつも、サブシステムやチップレット、さらにはフルソリューションの提供といった選択肢を検討していると述べています。
アームの経営陣は、「ミリワットからメガワットまで、最小のデバイスから最大のデータセンターまで対応できる唯一のコンピュートプラットフォームとして、今後の市場ニーズに幅広く応えるポジションにある」と強調しました。
投資家の評価は厳しめ
アナリストからは「半導体業界全体が好調な中で、平凡な決算結果では株価の上昇材料にならない」との指摘もあり、将来的な成長ストーリーをより明確に示す必要があるという見方が広がっています。
今後、アームがどのようにして「設計」から「製造寄り」の分野へと踏み込むか、そしてその過程でどれだけ市場の信頼を獲得できるかが焦点となりそうです。
*過去記事「アーム株が急伸、AIチップ市場参入の可能性に注目集まる」