2025年7月30日、超低消費電力チップを開発するアンビック(AMBQ)がニューヨーク証券取引所に上場し、初日の取引で株価が74%も上昇しました。公開価格24ドルに対して初値は38ドル、記事執筆時点では41ドル超で取引されており、AIブームに沸く市場の期待の大きさがうかがえます。
「クラウドからの脱却」を目指す超低電力AIチップ
アンビックは2010年に設立されたテキサス州オースティン拠点の半導体企業で、スマートウォッチやヘッドホンなど、電力制限のあるデバイスでAIアルゴリズムを直接実行する“エッジAI”向けチップを開発しています。
創業者でCTOのスコット・ハンソン氏は、「AIはクラウドから抜け出そうとしている」と述べ、バッテリー駆動の機器でAIを実行するには極めて低消費電力なソリューションが必要であると強調しています。
急拡大するエッジAI市場と4つの注力領域
CEOの江坂文秀氏は、上場の背景について「エッジAI需要の爆発的な拡大に対応するため、十分な製品ラインアップを整え、市場に素早く提供することが重要だった」と語っています。
同社がターゲットとするのは、以下の4分野です。
- ウェアラブルやスマートリングなどの個人用デバイス
- 医療・ヘルスケア機器
- 工場などの産業機器
- スマートホームおよびスマートビルディング向け機器
ガートナーの調査によると、2025年のエッジAI市場は139億ドル規模とされ、2028年には226億ドルまで拡大する見通しです。
IPO資金で開発スピードを加速、世界展開も進行中
IPOで調達した9600万ドルは、エンジニアリング体制の拡充と製品開発の加速に活用されます。アンビックは米国のほか台湾、シンガポール、日本、インド、中国にもチームを展開しています。
すでに同社のチップは2億7,000万台以上のデバイスに搭載され、2024年には4,200万ユニットを出荷。そのうち40%以上がAIアルゴリズムの実行に使われていると見られています。
今後は、同社の低電力技術を活かして、AIデータセンターや自動車向けなど、より高性能が求められる領域にも展開していくとしています。
注目されるエッジAIの次なる主役
半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)も出資しているアンビック。クラウド依存からの脱却を志向するAIトレンドのなかで、同社の超低消費電力技術は大きな差別化要因となっており、今後の成長に期待が集まります。