2025年7月29日、米鉄道業界において歴史的なニュースが飛び込んできました。ユニオン・パシフィック(UNP)がノーフォーク・サザン(NSC)を約850億ドルで買収することを正式に発表しました。この取引は、アメリカ初の「本格的な大陸横断鉄道」を誕生させるとされています。
東西を結ぶ巨大鉄道網が誕生
今回の合併により、新会社の鉄道網は全米43州にわたる5万マイル以上のルートをカバーし、約100の港を結ぶと発表されました。また、10カ所の国際インターチェンジへのアクセスも可能となる見込みです。
ユニオン・パシフィックはネブラスカ州オマハを本拠地に持ち、米国西部で強力なネットワークを展開。一方のノーフォーク・サザンはジョージア州アトランタに本社を構え、主に東部で事業を行っています。この2社の統合により、競合する他の鉄道会社にはない全米規模のネットワークが完成することになります。
買収額と今後の展望
買収は現金と株式を組み合わせた取引で、ノーフォーク・サザンの1株あたりの買収価格は320ドル。これは7月16日時点の過去30営業日の出来高加重平均価格に対して25%のプレミアムを上乗せしたものです。これによりノーフォーク・サザンの企業価値は約850億ドル、統合後の企業価値は2,500億ドル超に達すると見られています。
両社は合併により、年間で27.5億ドルのコストシナジーが期待できるとしています。取引完了は2027年初頭を目指しており、完了の2年目にはユニオン・パシフィックの調整後EPSに対して利益の押し上げ効果が見込まれています。
株式市場の反応と今後の注目点
発表当日の株式市場では、ユニオン・パシフィックの株価が約3.1%下落、ノーフォーク・サザンも約2.9%の下落となっています。一方で、2025年に入ってからユニオン・パシフィック株は年初来で3%の下落、ノーフォーク・サザンは18%の上昇を記録しています。
今回の大型合併により、他のクラスI鉄道(年商10.74億ドル超の大手鉄道事業者)にも再編の波が広がる可能性があります。CSXやバーリントン・ノーザン・サンタフェ(BNSF)などが次なる再編の主役となるか、注目が集まりそうです。
今回の合併の背景と評価
信用格付け会社ギミークレジットのアナリスト、ジェイ・カッシング氏は「この合併は債券保有者にとって比較的フレンドリー」と評価しています。1990年代の鉄道合併で発生した混乱を教訓としつつ、今回は「東西で分かれたネットワークの統合」であるため、統合時の課題は比較的少ないとしています。
今後数年間での統合プロセスがスムーズに進むかどうか、そして鉄道業界全体にどのような影響を与えるのか、市場関係者の関心が高まっています。