2025年7月25日、米テック系メディア「The Information」は、イーロン・マスク氏が主導するテスラ(TSLA)の人型ロボット「オプティマス(Optimus)」に関する独自レポートを公開しました。マスク氏は2025年末までに5,000台の生産を目指すと発言していますが、現時点では数百台の製造にとどまっており、目標達成には厳しい現実が立ちはだかっています。
開発の壁は「手」にあり
記事によると、テスラにとって最大の課題の一つは人間の手と同等の精密な動作を実現することです。ピアノを弾いたり、工場作業をこなしたりといった多様なタスクを目指す中で、ロボットの手の設計と制御ソフトウェアの開発に多くの時間とコストがかかっているようです。中には「手や前腕がない状態で放置されているロボット」も存在するとのことで、生産の停滞がうかがえます。
社内でも「極秘プロジェクト」
オプティマスに関する情報は社内でも極めて限られており、プロジェクトに関与していない社員は詳細を知らされていないようです。オプティマス製造現場へのアクセスには多重のセキュリティが設けられており、携帯電話の持ち込みも禁止されています。社内組織図からもオプティマス関係者は除外されており、徹底した情報統制が敷かれています。
現場では50台がテスト稼働中
2025年現在、カリフォルニア州パロアルトの施設では約50台のオプティマスが同時にテストされており、人間の監視下で歩行や物体の持ち上げといった基本動作の検証が行われています。また、一部の初期モデルはテスラの工場内で簡単な作業に投入され始めています。
マスク氏の描く未来と現実のギャップ
マスク氏は「2030年には毎月10万台のオプティマスを生産する」との目標も掲げており、「将来的にはEVよりも大きな事業になる」と語っています。しかし、ロボットのデモンストレーションではグラスを落とすなどのトラブルも報告されており、技術面での課題は依然として山積しています。
株主総会でロボットが踊る?注目の今後
記事では、11月の株主総会において、マスク氏がオプティマスの「ダンスチーム」を披露する予定であることも伝えられています。派手な演出とは裏腹に、2025年のテスラは売上減少に直面しており、投資家の信頼回復には現実的な進展が求められそうです。
ロボット業界の競争激化にも注目
テスラのほかにも、Figure AIや1X Technologiesといった企業が人型ロボット開発を進めており、技術とコストの両面で熾烈な競争が予想されます。簡素なピンセット型の手でも十分とする見方もあり、テスラのアプローチが最適解かどうかは今後の市場動向に委ねられます。
マスク氏のビジョンは「実現可能」か?
記事全体を通じて浮かび上がるのは、壮大なビジョンと技術的な現実のギャップです。2027年にオプティマスを火星に送るという構想もある中で、まずは2025年の5,000台という現実的なマイルストーンを超えられるのかが大きな注目点です。
*過去記事はこちら テスラ TSLA