2025年7月25日、米メディア「マーケットウォッチ」は、小型モジュール炉(SMR)を手がけるニュースケール・パワー(SMR)に関する特集記事を公開しました。エヌビディア(NVDA)がAIチップで市場を席巻しているように、ニュースケール・パワーは次世代のAIデータセンターに電力を供給する存在になる可能性があると指摘しています。
米国初のSMR設計承認企業
ニュースケール・パワーは、米国原子力規制委員会(NRC)から77メガワット級のSMR設計承認を取得しており、米国内で唯一、NRCに認可されたSMR設計を持つ企業です。この設計は自然対流冷却や受動安全システムを採用しており、安全性と電力密度の両立を図っています。6基構成の発電所で462メガワットの電力供給が可能になる見通しです。
この承認は「標準設計承認(SDA)」というもので、まだフルライセンスではありませんが、電力会社がこの設計を参考に建設許可を申請できるようになる重要なステップです。競合他社が承認プロセスに時間を要している中、ニュースケール・パワーは一歩先を行く存在となっています。
豊富な政府支援と財務基盤
ニュースケール・パワーはこれまでに米エネルギー省(DOE)から5億7500万ドル以上の支援を受けており、今後発表される総額9億ドルのSMR支援プログラムにおいても、最有力候補と目されています。2025年第1四半期には、前年同時期の9倍となる1340万ドルの売上を記録し、技術ライセンス料やルーマニアでのプロジェクト向けエンジニアリングサービスが収益に寄与しました。
とはいえ、同四半期の営業損失は3500万ドルと、いまだ赤字が続いています。ただし、約4億9200万ドルの現金と短期投資を保有しており、さらに第1四半期に1億200万ドルの株式売却も実施するなど、3年以上の資金繰りが可能とされています。
株価は乱高下も長期成長期待が高まる
ニュースケール・パワーの株価は、2024年に445%の上昇を記録し、2025年も半年で120%超の上昇を見せました。現在の時価総額は130億ドルを超えており、実働する原発がない企業としては異例の評価となっています。背景には、トランプ大統領の原子力推進政策や、AIデータセンターへの原子力供給を「国家防衛インフラ」と位置づけた大統領令の影響があります。
ただし、2023年末にユタ州で予定されていた最初の米国内SMRプロジェクトがコスト増により中止された経験もあり、先行投資型の原子力事業におけるリスクも顕在化しています。
国際展開と競争の激化
ニュースケール・パワーは現在、ルーマニアでの6基構成のSMR建設に向けた設計作業を進めており、2027年の着工、2030年の稼働を目指しています。このプロジェクトが成功すれば、初の商用SMRとしてグローバル展開の足がかりとなる可能性があります。
また、韓国の斗山グループとの提携により、初期の12基のSMRモジュール製造を進めるなど、サプライチェーン強化にも取り組んでいます。
一方で、GEベルノバ(GEV)と日立の合弁会社によるカナダでのSMRプロジェクトが2028年稼働予定で進行しており、X-energyはアマゾン(AMZN)と提携するなど、競合他社も本格的に動き出しています。
今後18カ月が分水嶺に
ニュースケール・パワーのCEOであるジョン・ホプキンス氏は、2025年末までに最初の「Tier 1」顧客(大手電力会社やデータセンター連合)との契約を目指しており、その成否が今後の成長に大きく影響するとされています。
今後18カ月でDOEの支援獲得、顧客契約の締結、プロジェクトの進捗をどれだけ達成できるかが、ニュースケール・パワー株への投資判断のカギを握ると言えそうです。
革命的なエネルギー投資先となるか
AI時代の電力供給インフラとして、また米国のエネルギー安全保障を支える存在として、ニュースケール・パワーが果たす役割に注目が集まっています。株価のボラティリティは高いものの、その先にある成長機会を見据え、投資家の関心が高まっている状況です。