2025年7月24日、米国株式市場でインターナショナル・ビジネス・マシーンズ(IBM)の株価が急落、7.8%安で終値は260.55ドルとなりました。第2四半期決算で総売上は市場予想を上回ったにもかかわらず、主力のソフトウェア部門でわずかに予想を下回ったことが嫌気され、市場は厳しい反応を見せました。
ソフトウェア部門の期待外れと現実的なフリーキャッシュフロー予測
IBMは通期の売上見通しを据え置き、フリーキャッシュフローの見通しも「135億ドル超」と発表しました。これは従来の「約135億ドル」から微増ではあるものの、アナリストの一部からは「実質的な引き上げには当たらない」と指摘されました。ソフトウェア収益の失速は、トランザクション処理分野での低調さが原因とされています。
メリウスは「今が買い」と評価、z17メインフレームとRed Hatに注目
メリウス・リサーチのアナリストは、現在の株価下落を「買いの好機」と捉えています。同社は最新のz17メインフレームの売上成長、米ドル安による追い風、トランザクション処理回復の可能性を背景に、IBMのキャッシュフローと売上成長率(為替換算前で5%超)について「むしろ控えめな見通し」と分析しています。
さらに、IBMが2019年に買収したRed Hatについては、同社の長期的な企業価値を左右する最重要事業と評価。第2四半期のハイブリッドクラウド部門の売上は、前年比で16%増(為替換算前で14%増)と前四半期から加速しており、Red Hatの寄与が明確に表れています。
コンサルティング部門は停滞も、AIと量子コンピューティングに期待
一方、IBMのコンサルティング部門については「成長の足を引っ張っている」との評価が多数です。上期の契約実績が弱く、年間を通じての売上は横ばいになる見通しです。ただし、AI事業が今後の下支えになる可能性もあり、IBMが公表したAI関連事業の規模は75億ドルを超えているとされています。
また、z17メインフレームは今後の成長ドライバーとして注目されており、為替換算ベースで売上成長を5%以上に押し上げる可能性があるとメリウスは見ています。さらに、量子コンピューティング分野においても長期的な成長余地があると指摘されています。
ウェドブッシュやバンク・オブ・アメリカも強気継続
ウェドブッシュ証券のアナリストも、今回の株価下落を「一時的な反応」と位置づけ、引き続き「アウトパフォーム」評価と325ドルの目標株価を維持しています。AIやハイブリッドクラウドへの需要がIBMの成長を後押しするとの見方です。
また、バンク・オブ・アメリカはソフトウェア部門の減速を反映し、目標株価を320ドルから310ドルに引き下げたものの、買い推奨は継続しています。「高利益率のソフトウェア事業が今後の見通しを押し上げる」として、今後の見積もり引き上げに期待しています。
まとめ:一時的な失望と長期的な成長期待のはざまで
IBMの株価は今回の決算を受けて大きく下落しましたが、複数のアナリストはその反応を過剰と見ています。ソフトウェア部門の成長鈍化は確かに不安材料ですが、Red Hatやz17メインフレーム、AI事業などに対する期待が中長期的には株価を支えるとの見解が優勢です。投資家にとっては、短期のボラティリティを乗り越える忍耐力が求められる局面といえそうです。
*過去記事はこちら IBM