電気自動車大手のテスラ(TSLA)は、2025年7月23日に第2四半期決算を発表しました。市場予想をわずかに下回る内容となりましたが、2025年後半に新たな「より手頃な価格のモデル」の生産を開始すると発表し、注目を集めました。
売上・利益ともに市場予想に届かず
テスラの第2四半期の売上は225億ドルで、前年同期比で12%減少しました(前年は250.5億ドル)。ブルームバーグ調べのコンセンサス予想の226.4億ドルをわずかに下回る結果です。調整後1株当たり利益(EPS)は0.40ドルで、こちらも予想の0.42ドルに届きませんでした。営業利益は9億2,300万ドルと、予想されていた12億3,000万ドルを下回りました。
規制クレジット収入の減少が逆風に
今回の決算で注目されたのが、規制クレジットによる収益の大幅な減少です。前年の8億9,000万ドルから4億3,900万ドルへとほぼ半減しました。これは米国で新たに施行された「One Big Beautiful Bill(OBBB)」の影響とされています。
最高財務責任者のバイバヴ・タネジャ氏は、OBBBによる税制変更により2025年第3四半期末で7,500ドルのEV税控除が終了することから、駆け込み需要が発生し、今四半期の米国内の供給が限定的になると説明しました。また、8月後半以降の注文については納車保証ができない可能性があると警告しました。
「より手頃な価格のモデル」生産は2025年後半に
テスラは声明の中で、2025年後半に新たなエントリーモデルの量産を開始する計画を明かしました。今年6月には初期試作車の製造をすでに開始しているとのことです。このモデルは現在の最安モデルである後輪駆動の「モデル3(約4万3,000ドル)」よりもさらに低価格になるとみられています。
ただし、価格や仕様の詳細は公表されておらず、公式なデザインやレンダリングもこれまで公開されていません。
ロボタクシーの量産計画は2026年を維持
自動運転タクシー事業も引き続き進行中です。テスラはロボタクシー専用車の量産を2026年に開始する計画を維持しており、テキサス州オースティンでは試験運用エリアを拡大中です。イーロン・マスク氏はカリフォルニア州ベイエリアへの展開も示唆しましたが、現時点で州当局への許可申請は提出されていないようです。別報道では、ネバダ州当局と試験運行に関する協議を進めているとも伝えられています。
世界的な販売減と地域別課題
2025年第2四半期における世界の納車台数は38万4,122台となり、前年同期比で13.5%の減少となりました。モデルYの刷新に伴う販売調整が一因とみられますが、ヨーロッパでの販売低迷や米国での需要鈍化が目立ちます。消費者がハイブリッド車を好む傾向も影響していると分析されています。
テスラは株主向け書簡で、「グローバルな貿易・財政政策の変化が自動車およびエネルギーの供給網やコスト構造、耐久消費財への需要に与える影響を測定することは困難です」と述べました。その上で、「我々は、車両およびエネルギー事業の将来成長に備えた投資を行っていますが、実際の成果はマクロ経済の環境、自動運転の進展速度、そして各工場での生産立ち上げに左右されます」としています。
株価は決算発表後に急落
決算発表を受け、テスラ株は時間外取引で4.7%下落し、316.95ドルまで下げました。発表直前の23日の終値は332.56ドルでした。マスク氏は決算説明会で、EV税控除終了後には「しばらく厳しい四半期が続く可能性がある」と認めています。
テスラの今後の成長は、新モデルの投入とロボタクシーの展開にかかっていますが、市場の期待に応えるには明確な進展と実行力が問われる局面となっています。
*過去記事はこちら テスラ TSLA