2025年7月23日、通信大手のAT&T(T)は2025年第2四半期の決算を発表し、売上・利益ともに市場予想を上回りました。しかしながら、株価は市場前取引で3.7%下落し、26.41ドルを記録しました。ライバルのベライゾン(VZ)が好調な決算に加えて通期ガイダンスを引き上げた中、AT&Tに対してもそれ以上の期待がかかっていたと見られます。
売上・利益は予想超えも、ガイダンス据え置き
AT&Tは第2四半期の調整後1株利益が54セント、売上は308億ドルだったと発表しました。これはアナリスト予想の53セント、305億ドルをそれぞれ上回る結果です。
しかし、同社は通期の業績予想を微調整したものの、昨年12月の投資家向け説明会で発表した「1株あたり利益1.97〜2.07ドル」「フリーキャッシュフロー約160億ドル」という従来の見通しを据え置きました。これが市場の期待とのギャップにつながったと見られます。
トランプ大統領の減税政策による恩恵と投資計画
AT&Tは、トランプ大統領が署名した税制改革によって65億〜80億ドルの節税効果が見込まれると説明しました。さらにそのうち35億ドルを光ファイバー網の拡充に充てる計画です。通信業界では現在、テレビ、5Gモバイル、ブロードバンドを一体化した「バンドル商品」が主力になりつつあり、AT&Tもこの流れに対応しようとしています。
ライバル企業との比較と利益確定の動き
今回の株価下落の背景には、前日にベライゾンが決算発表で通期ガイダンスを引き上げたことも影響しています。これにより、AT&Tにも同様の発表を期待する声が高まりましたが、結果的には現状維持となり、失望を誘ったと考えられます。
また、AT&Tの株価は2025年に入ってから20%上昇しており、S&P500(+7%)、ベライゾン(+7%)、Tモバイル(TMUS)(+6%)を大きく上回る成績を見せています。そのため、一部の投資家が利益を確定するタイミングを狙っていた可能性もあります。
今後の注目点は「光ファイバー」と低価格戦略
AT&Tは第1四半期の時点で、低価格プランを武器に顧客を他社から引き付けている兆候がありました。さらに、ルーメン・テクノロジーズ(LUMN)の住宅向け光ファイバーネットワーク買収契約も、将来の成長ドライバーとして市場から評価されています。
通信業界全体が設備投資を加速する中、AT&Tの今後のガイダンスや戦略変更が注目されます。