2025年7月17日、台湾積体電路製造(TSMC)は第2四半期決算で純利益が前年比61%増という好結果を発表しましたが、その後の経営陣の発言や市場の動きから、さらなる成長に向けた確かな手応えが見えてきました。特にAI・HPC需要の強さと、アリゾナ新工場の進展が市場の期待を後押ししています。
売上成長率を30%に引き上げ
TSMCは2025年の通期売上成長率見通しを、従来の「20%台半ば」から「30%」へと引き上げました。米ドルベースで第2四半期の売上が44%増となったのに続き、第3四半期も318億~330億ドルの売上を予想しています。
売上成長の主な原動力は、引き続きAI関連チップ。TSMCは、エヌビディア(NVDA)やアップル(AAPL)、クアルコム(QCOM)、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)など、主要な半導体設計企業の製造を担っており、特にAIや高性能コンピューティング(HPC)向けの受注が集中しています。
為替の逆風がマージンを圧迫
一方、粗利益率(グロスマージン)はわずかに低下。第2四半期の粗利益率は58.6%で、前四半期の58.8%から微減となりました。第3四半期については55.5~57.5%を予想していますが、背景には為替の影響と、台湾国外での生産コスト上昇があります。
ジェフリーズなどのアナリストは、TSMCのマージンが55%前後まで下がる可能性もあると指摘しており、投資家の関心は今後の収益性の維持にも向けられています。
アリゾナ新工場が本格稼働へ
魏哲家CEOは決算後のカンファレンスコールで、米アリゾナ州に建設中の製造拠点について、「第1工場では2024年第4四半期から量産を開始しており、第2工場の建設も完了した」と発表しました。将来的には3つ目の拠点も予定されており、米国での生産強化は、関税リスクへの備えとしても注目されています。
なお、現在のところ米政府は半導体および製造装置に対して関税を課していませんが、商務省による国家安全保障上の調査が進行中です。今後の規制次第では、米国内生産の重要性が一段と高まる可能性があります。
今後の見通し
TSMCは今後5年間にわたりAI関連チップの年平均成長率を40%以上と見込んでおり、引き続き積極的な投資姿勢を維持しています。地政学的リスクが懸念される中でも、TSMCの明確な成長戦略と供給網の多様化は、投資家にとって重要な安心材料となっています。
*過去記事はこちら TSMC