米国レアアース戦略の中心へ MPマテリアルズの未来

  • 2025年7月18日
  • 2025年7月18日
  • BS余話

2025年7月17日、レアアース(希土類)を扱う米企業、MPマテリアルズ(MP)の株価が一時下落する場面があったものの、終値は前日比2.92%高の60.26ドルで取引を終えました。株式売出しという需給面での悪材料にもかかわらず、株価が持ち直した背景には、米国防総省およびアップル(AAPL)との相次ぐ大型契約が存在します。

国防総省・アップルとの戦略的契約

MPマテリアルズは2025年7月10日、米国防総省との間で、米国内におけるレアアースの安定供給を目的とした契約を締結しました。この契約には価格の下限保証が含まれており、中国が市場に安価な製品を供給した場合でも、同社の収益性が守られる仕組みです。

さらに数日後には、アップルとの契約も発表されました。アップルは、中国に依存しないサプライチェーン構築の一環として、MPマテリアルズに資金提供を行い、米国産の希土類資源へのアクセスを確保しました。

株式売出しの影響と回復

同社は株価の上昇を受けて、当初5億ドル規模の株式売出しを予定していましたが、需要が強く、最終的には6億5000万ドルを1株55ドルで調達しました。この資金は、第2の磁石製造拠点である「10Xファシリティ」を含む事業拡大に使われる予定です。

株式売出しによる一時的な下落は見られたものの、その後の回復は投資家の期待の高さを反映しています。

アナリスト評価と目標株価

ドイツ銀行のアナリスト、コリンヌ・ブランシャール氏は、MPマテリアルズの目標株価を20ドルから67ドルへと235%引き上げました。これはファクトセットによれば、ウォール街の中でも最も強気の予想です。同氏は2028年のEBITDAを4億9500万ドルと見積もり、それに20倍の倍率を適用した評価に基づいています。

一方で、「現時点で多くの成長要因はすでに株価に織り込まれている」との見方も示しており、今後の材料は中期的な視点で見る必要があるとも述べています。

今後の見通しとまとめ

MPマテリアルズは今後3年間で合計8億ドル近い設備投資を予定しており、レアアース磁石の生産能力を現状の9倍にまで拡大する計画です。こうした成長には多額の資金が必要ですが、政府と大手企業からの支援により、同社の資金調達基盤は強化されています。

ファクトセットによると、同社株を「買い」と評価するアナリストの割合は73%と、S&P500構成銘柄の平均(55%)を大きく上回っています。年初来の株価上昇率は275%に達しており、今後も米国のレアアース戦略において重要な役割を果たしていくと見られます。

地政学的リスクが高まる中、MPマテリアルズは中国依存を脱し、米国の安全保障と産業政策の中心的存在へと進化を遂げつつあります。

*過去記事「MPマテリアルズ株が急騰、アップルとの提携が後押し

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