オランダの半導体製造装置大手ASMLホールディング(ASML)は、2025年7月16日に第2四半期の決算を発表しました。同社は2026年に向けて成長準備を進めているものの、マクロ経済や地政学的な不透明感が高まっていることを理由に、成長見通しの確約を避ける姿勢を示しました。
成長の準備は継続するも、確約は避ける姿勢
ASMLの最高経営責任者(CEO)であるクリストフ・フーケ氏は決算発表の中で、「引き続き2026年の成長に備えて準備をしているが、現時点ではそれを確認することはできない」と述べました。同社の株価はアムステルダム市場で一時7.1%下落し、過去1年間で33%値下がりしています。
関税の影響と米中摩擦の余波
最高財務責任者(CFO)のロジャー・ダッセン氏は、米国への新システムや部品の輸出に対する関税の可能性と、それに対する他国の報復措置がASMLの利益率に悪影響を及ぼす可能性があると指摘しました。特に、トランプ政権下での政策実施の混乱が、設備投資などの企業活動に不確実性をもたらしていると述べました。
第3四半期ガイダンスは市場予想を下回る
ASMLは、第3四半期の売上高を74億〜79億ユーロと見込んでおり、市場予想を下回る水準となっています。一方で、通年の売上成長率については15%という従来のガイダンスを維持しています。
第2四半期の受注額は55億ユーロとなり、アナリスト予想の48億ユーロを上回りました。ASMLは今後、受注額の公表を取りやめる方針であり、売上や利益を中心とした業績評価にシフトしていくとしています。
AI需要が中長期の追い風に
ASMLは、極端紫外線(EUV)リソグラフィ装置を製造する世界で唯一の企業であり、AI向け最先端チップを手がけるエヌビディア(NVDA)などの製造を支える重要な存在です。フーケ氏は「2026年を見据えたとき、AI顧客のファンダメンタルズは引き続き堅調である」と強調しました。
AI関連のインフラ投資は引き続き活発であり、それに伴ってASMLの装置に対する需要も中長期的には高水準を維持すると見られています。
中国市場との関係も焦点に
ASMLは中国に対して最先端のEUV装置を輸出することはできませんが、同国は2025年第1四半期において同社の2番目に大きな市場でした。現在は旧世代のDUV装置についても一部制限が課されていますが、最近エヌビディアやAMDが中国向けチップ輸出の再開に合意したことが、ASMLにとっても間接的に好影響をもたらす可能性があります。
サプライチェーンの調整も影響
インテル(INTC)など一部の顧客企業ではコスト削減が進められており、ドイツやポーランドでの工場計画が延期されるなど、ASMLの装置需要にも一定の調整圧力がかかっています。
まとめ
ASMLは、2025年第2四半期において堅調な受注と売上を記録しましたが、関税や地政学的なリスクを理由に2026年の明確な成長見通しを提示することは控えました。一方で、AI需要や中国市場とのつながりが同社の中長期的な業績を下支えする要素として注目されています。