エヌビディア(NVDA)が2025年7月14日深夜、米国政府からの正式な承認を得て、中国向けにH20 AIチップの出荷を再開する方針を明らかにしました。この発表を受けて、同社株は翌15日のプレマーケットで4.7%高となる171.78ドルを記録しました。
米国政府の“事実上の方針転換”が背景に
今回の販売再開は、4月に発効したH20チップの輸出禁止措置を事実上撤回するもので、トランプ政権下での強硬姿勢に一部修正が加えられた形です。エヌビディアは公式ブログで「米政府はH20 GPUの販売許可申請を承認するとの確約を与えた」と明言し、速やかに出荷を開始する意向を示しました。
フアンCEO、ファーウェイの台頭に警鐘
エヌビディア共同創業者でCEOのジェンスン・フアン氏は、H20の禁止措置がかえってファーウェイのような中国企業を利する結果につながると主張してきました。同氏は以前、「われわれが競争から離れれば、中国は独自のエコシステムを築き、グローバル市場での影響力を強める」と警告していました。
また、フアン氏は先週、トランプ大統領と直接会談したと報じられており、この会談が今回の方針変更につながった可能性も取り沙汰されています。
アナリスト、目標株価を引き上げ
メリウス・リサーチのアナリスト、ベン・ライツェス氏はこの発表を受けて、「2026年後半と2027年前半の売上成長に強力な追い風となる」とし、エヌビディアの目標株価を205ドルから235ドルに引き上げました。同氏は、今回の決定により「ファーウェイとの競争でグローバルな優位性を維持できる」とも述べています。
RTX PROチップも販売許可、メタからの特需にも期待
米政府が許可したのはH20だけではありません。中国向けに新開発されたRTX PROも販売可能との判断が下されており、これがさらなる売上加速につながると見られます。
さらに、メタ・プラットフォームズ(META)が2026年に稼働予定のオハイオ州AIデータセンター「Prometheus」を含む複数の巨大クラスタ構築を進めており、これにエヌビディア製GPUが採用される可能性も高まっています。
株価は年初来で22%上昇に転じる
今年4月時点では年初来で30%近い下落を記録していたエヌビディア株ですが、その後の回復と今回の中国再進出の報を受け、年初来では22%の上昇に転じています。時価総額4兆ドルを突破した直後のタイミングでの好材料が、さらなる株高につながる可能性もあります。
今後の焦点
- RTX PROの技術詳細と市場評価
- フアンCEOと中国政府関係者との協議の行方
- 米中間のAI技術貿易ルールの再構築
- ファーウェイなど中国企業との競争構造の変化
エヌビディアは、今後もAIインフラ市場の“軸”として注目が集まり続けるでしょう。中国市場への再参入は、グローバルAI競争における戦略的勝利といえます。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA