エヌビディア(NVDA)は2025年7月14日、米国政府の承認を得て中国向けにH20 AIチップの販売を再開すると発表しました。これは、2025年4月以降停止されていた輸出規制が事実上緩和される形となり、同社にとって大きな転機となります。
米中間の貿易協議と緊張緩和が背景に
今回の動きは、米中間で進行している貿易協議の一環と見られています。報道によると、米国政府は中国側にレアアースの輸出を認めるよう促す見返りとして、AI関連の輸出規制を一部緩和する方針に転じたようです。トランプ大統領率いる政権下での強硬な規制姿勢から一転した形です。
中国企業や株式市場も好反応
この発表を受け、アリババや北京信聖科技(Beijing Sinnet Technology)などの中国テック企業にとっても追い風となりました。香港市場のハンセンテック指数は最大2.2%上昇し、中国のデータセンター関連銘柄は軒並み買われました。
CEOフアン氏、中国で新製品も発表へ
エヌビディアの共同創業者でCEOのジェンスン・フアン氏は現在中国を訪問中で、サプライチェーン博覧会に参加しています。同氏は現地で「RTX PRO」という新たな中国向け製品を発表予定で、この製品は米国政府の規制に抵触しない仕様とされています。
巨大な中国市場に再びアクセス
H20は、エヌビディアの高性能チップ「ホッパー」シリーズの簡易版で、中国市場向けに開発された製品です。従来のH800に続いて登場したもので、米国の制限に対応した設計がなされています。販売停止による在庫損失は最大で55億ドル規模になるとされており、今回の再販売決定は同社にとって財務面でも大きな朗報となります。
グローバルAI市場の要としての存在感
エヌビディアは先週、時価総額4兆ドルを突破した初の企業となり、AIインフラの中核を担う企業としての地位を確立しています。フアン氏は、エヌビディアのチップが軍事利用には適さず、米国の制限下にあることが抑止力になると強調しており、安全保障面の懸念にも対応する姿勢を見せています。
今後の注目ポイント
今後は、エヌビディアと中国政府との高官会談の内容や、新製品RTX PROの性能と市場での反響が注目されます。また、米中の技術貿易関係がどのように進展するかも、同社の業績に大きく影響していくと考えられます。