2025年7月10日、米投資情報メディア「バロンズ(Barron’s)」は、アマゾン・ドット・コム(AMZN)が進める宇宙インターネット構想「プロジェクト・カイパー(Project Kuiper)」に関する最新動向を報じました。記事によれば、アマゾンは2020年代後半までに3,000基以上の衛星を打ち上げ、AWSの顧客などに向けた通信サービスの提供を目指しています。
成長の柱として位置づけられるプロジェクト・カイパー
バンク・オブ・アメリカ証券のアナリスト、ジャスティン・ポスト氏は「カイパーはアマゾンの経営陣にとって最重要成長プロジェクトのひとつ」と述べ、同社のコスト削減方針の中でも例外的な位置づけにあると指摘しました。
このプロジェクトには今後、総額230億ドルが投じられる見込みで、うち150億ドルがロケット打ち上げ関連費用になるとのことです。2025年第4四半期には四半期ベースで最大11億ドルの投資が行われると予測されています。
通信サービスで2032年に年間72億ドルの売上予測
ポスト氏は、2032年までに約700万人の利用者が月額80ドルの料金を支払うことで、年間売上は72億ドルに達すると試算しています。サービスは2025年末にも始まる可能性があり、第2四半期には衛星の初回展開が始まりました。
先行するスペースXとの競争構図
一方、競合のスペースXは既に9,000基以上の衛星を展開しており、同社の「スターリンク」はすでに600万人の加入者を持つ黒字サービスに成長しています。スペースXは2025年に入り、7月上旬までにファルコン9ロケットを83回打ち上げ、世界の宇宙打ち上げ全体の54%、米国内では90%以上を占めています。
この圧倒的な打ち上げ能力の裏には、スペースXの再利用型ロケット技術があり、今後はさらにコスト削減を目指して新型の完全再利用ロケット「スターシップ」も開発中です。ただし、このスターシップは2025年6月時点で地上試験中に爆発事故が発生するなど、課題も残されています。
ジェフ・ベゾス氏のブルーオリジンは別会社
アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が関与する宇宙企業「ブルーオリジン」も再利用ロケット「ニューグレン」の開発を進めていますが、同社はアマゾンとは資本関係がなく、現在のところ1回しか軌道到達に成功していません。このため、アマゾンは打ち上げ費用を他社同様に商業価格で負担する必要があります。
株式市場の反応とアナリスト評価
スペースXは非上場企業ながら、直近の評価額は4,000億ドルとされています。対するアマゾンの時価総額は約2.6兆ドル。ポスト氏はアマゾン株に「買い」の評価を継続し、目標株価を248ドルに設定しています。なお、7月10日の取引でアマゾン株は0.13%下落して終値は222.26ドルとなりました。
宇宙ビジネスの主導権をめぐる今後の展開に注目
スペースXが築いた衛星通信ビジネスの地盤に、アマゾンがどこまで迫ることができるのか。豊富な資金力を背景に挑むアマゾンの動きは、宇宙ビジネスの次なる成長分野として今後も要注目です。
*過去記事はこちら アマゾン AMZN