広告大手WPPが急落、広告費削減の波が鮮明に

  • 2025年7月10日
  • 2025年7月10日
  • BS余話

2025年7月9日、世界最大級の広告代理店であるWPP(WPP)の株価が急落しました。米国市場では1日で18%の下落となり、29.34ドルまで落ち込みました。これは2020年3月以来の安値であり、同社の業績見通しに対する市場の厳しい反応を映し出しています。

業績悪化と予想を下回る通期見通し

WPPは2025年上半期の取引状況に関する最新のアップデートを発表し、第2四半期の業績が進むにつれてパフォーマンスが悪化したと報告しました。特に注目すべきは、実質ベースの売上(パススルー費用を除く)が上半期全体で4.2%〜4.5%、第2四半期だけで5.5%〜6%減少するとの見通しを明らかにした点です。

同社は当初、通期では売上が横ばいから2%減少程度と見ていましたが、今回の発表でその予想を3%〜5%の減少へと下方修正しました。

広告投資減少の兆候は業界全体に波及か

WPPのCEOマーク・リード氏は声明の中で、「今年初めからマクロ経済環境が厳しく、純増ビジネスも減少している。6月のパフォーマンスは予想を下回り、この傾向は下半期も続くと見ている」と述べました。

また、CFOのジョアン・ウィルソン氏も、マクロ経済の影響が第2四半期でより顕著になったとし、「当初想定したガイダンスの下限をも下回った」と述べています。

大手クライアントの動向にも注目

WPPはグーグル、アップル、コムキャスト、フォードなどを大口顧客として抱えており、上位10社で売上の20%を占めています。広告費の削減傾向が続けば、同社の業績だけでなく広告業界全体にも波及する可能性があります。

また、2025年の世界広告成長率見通しも6%に引き下げられ、前年時点の7.7%から減速する見込みです。地政学リスクや脱グローバル化の動きが企業の投資意欲を抑制していることが背景にあると考えられます。

消費者心理の冷え込みが示す今後のリスク

広告費は企業が景気悪化を見越して真っ先に削減する項目のひとつであり、WPPの予測は消費支出の先行指標ともなり得ます。実際、米国では2025年春以降、消費者信頼感やセンチメントが大きく低下しています。

5月には消費者センチメントが過去2番目の低水準を記録し、6月も関税問題を背景に信頼感が予想外に悪化しました。回復傾向は見られるものの、パンデミック前の水準には遠く及びません。

今後の投資判断に向けて

WPPの今回の業績下方修正は、単なる一企業の問題にとどまらず、広告業界やグローバル経済の先行きを測る上でも重要な材料です。景気後退の兆候を示す動きとして、今後の広告・マーケティング関連株の動向を注視する必要がありそうです。

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