2025年現在、「AIエージェント(Agentic AI)」という言葉を耳にする機会が増えてきました。単なるチャットボットとは異なり、AIエージェントは人間の手を借りずに複数のステップをこなし、実務を自動化できるのが特徴です。
この分野の動向を鋭く分析しているのが、米テクノロジーメディア『The Information』です。2013年に創刊されたこの有料ニュースサイトは、シリコンバレーのスタートアップや大手テック企業に関する独自スクープで知られており、世界中の投資家・経営者・開発者から高い評価を得ています。
そんな『The Information』が2025年7月に発表したレポートでは、現在実用化が進む6つのAIエージェントのタイプが紹介されました。本記事では、その分類と代表的な用途について、要点をかみ砕いて解説します。
AIエージェントの6分類とその用途
カテゴリ | 定義 | 代表的な製品 | 主な用途 |
---|---|---|---|
業務タスクエージェント | 複数の業務用アプリケーション上でアクションを実行できるエージェント | UiPath、Microsoft Power Automate、Zapier + AI | 請求書処理、データ入力、文書分類、スケジューリング |
会話型エージェント | テキストや音声で対話しながら、カスタマーサポートや社内のIT・人事対応を行うチャットボット型エージェント | Google Dialogflow、Microsoft Dynamics 365、Amazon Lex、Salesforce Agentforce、ServiceNow NowAssist、Sierra、Decagon | カスタマーサービス、ITサポート、HR業務 |
リサーチエージェント | 学術論文やWebからの信頼性の高い情報を収集・分析・検証するエージェント | OpenAI Deep Research、Perplexity Pro、Scite Assistant、Elicit、AlphaSense | 技術的な難問の解決、引用情報の取得、調査分析 |
分析エージェント | 構造化データを分析し、レポートやグラフを生成するエージェント | Power BI Copilot、Tellius、ThoughtSpot、Glean | データ照会、ダッシュボード作成、ビジネスインサイト提供 |
開発者向けエージェント | ソフトウェアエンジニアの高度なコーディング作業を支援するエージェント | Cursor、Windsurf、GitHub Copilot、CodeWhisperer、Codeium、Claude Code、Cognition’s Devin、Cline | コード補完、ドキュメント生成、デバッグ、リファクタリング、サイト信頼性エンジニアリング |
ドメイン特化型エージェント | 法律、医療、金融など専門分野に特化した高精度エージェント | Harvey(法律)、Hippocratic AI(医療)、Vic.ai、Rogo、Hebbia(金融) | 契約分析、医療トリアージ、財務分析 |
なぜ今、AIエージェントが注目されているのか?
これらのエージェントは、単に会話を行うだけでなく、「外部ツールとの連携」や「長時間の持続作業」も可能になってきています。たとえば、オンライン中古車販売のカーバナ(CVNA)では、AIに自然言語で指示を出すだけでウェブページが構築できる社内ツールを導入。監査法人のアーンスト・アンド・ヤング(EY)では、顧客のIT監査をAIが自動で実行しています。
また、オープンAIやアンソロピックが提供する最新モデルでは、数時間単位で継続的に作業できる能力も確認されており、コーディングやデータ分析、ドキュメント作成の分野で導入が加速しています。
導入のハードルと将来性
確かに、こうしたエージェントを導入するには、ある程度のコストやインフラ、技術的な知識が必要です。しかし、それを上回る人件費削減や業務効率化の効果が期待できるため、スタートアップから大企業まで幅広く導入が進んでいます。
2029年には、AIエージェント市場が数十億ドル規模に成長するとも予測されており、今後のビジネス戦略における“必須ツール”になる可能性が高いと予想されます。
まとめ:自社に合ったエージェントの選定を
AIエージェントの分類を知ることで、自社の業務にどのタイプが最適かを判断しやすくなります。特定業務の自動化を目指すのか、顧客対応を効率化したいのか、研究やコーディングの補助が必要なのか──目的に応じたエージェント導入が、これからのDX時代の鍵を握ります。