TSMC、世界展開に苦悩:アメリカ優先で日本工場に遅れか

  • 2025年7月6日
  • 2025年7月6日
  • TSMC

2025年7月、世界最先端の半導体製造を担うTSMC(TSM)が、米国と日本で同時に進める拡張計画の調整に苦慮しています。

日本・熊本の第2工場、建設に遅れ

TSMCは昨年、日本の熊本県に第2工場を建設すると発表しました。総投資額は約200億ドルにのぼります。しかし、同社が米国での事業拡大に注力していることから、日本での工事スケジュールが遅れているとウォール・ストリート・ジャーナルが報じました。

TSMCはコメントを控えていますが、複数の関係者によれば、米国内で計画されている3つの新工場を含む1,650億ドル規模の投資が優先されているとのことです。

各国の圧力と政治的リスクが投資判断に影響

TSMCは、トランプ大統領政権の要請を含め、各国政府から国内製造拠点の強化を求められています。同社は声明で「グローバルな製造拡大戦略は、顧客ニーズやビジネス機会、政府支援、コスト経済性などを踏まえて決定している」と述べ、米国での投資が他地域に影響を及ぼすことはないとしています。

最先端技術は台湾に集中、海外は世代遅れ

TSMCは、エヌビディア、アップル、クアルコム、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)といった大手企業に対して、AIやスマートフォン用のチップを製造しています。

しかし、台湾政府は最先端技術の海外流出を防ぐため、最新プロセスの製造は国内に限定し、海外工場には一世代前の技術しか使用できないという法律を可決しました。この方針により、アメリカなどに建設される工場では、台湾よりも技術レベルの低いチップ製造が続く見込みです。

アリゾナでの2ナノ製造、台湾より数年遅れ

TSMCは、米アリゾナ州で最先端の2ナノメートルプロセスによるチップ製造を2028年から開始する予定です。ただし、台湾国内での量産開始よりも数年遅れる見通しであり、米国企業は当面、台湾から最先端チップを輸入し続ける必要があります。

過剰投資と関税リスクにも注意が必要

TSMCのように複数国での製造拠点を同時展開する企業にとっては、将来的な生産過剰リスクも懸念されています。

また現在、ホワイトハウスは半導体、製造装置、PC、スマートフォンなどを関税の対象外としていますが、米商務省は国家安全保障を理由に、半導体輸入への関税導入の是非を調査中です。今後の動向次第では、TSMCの海外製造拠点にとって大きな影響を及ぼす可能性があります。

株価はやや下落、今後の成長戦略に注目

こうした背景の中、TSMCの株価は7月4日の台北市場で前日比0.5%安となりました。各国の政策・規制、地政学リスク、顧客ニーズが複雑に絡み合う中で、同社の投資判断と製造戦略が今後の半導体業界全体に大きな影響を与えることが予想されます。

*過去記事はこちら TSMC

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