2025年前半、関税の導入、市場の乱高下、中東情勢の悪化など不安要因が重なる中でも、米国の個人投資家は過去最高水準の株式取引を行いました。ナスダックのデータによると、個人投資家による株式の累積売買額は6.6兆ドルを超え、過去最大となりました。
買い越し姿勢が鮮明に
ナスダックによると、個人投資家は2025年前半に約3.4兆ドル分の株式を購入し、3.2兆ドル分を売却しました。この結果、買い越し額は2,000億ドルに達し、市場の変動にもかかわらず、積極的な「買い」の姿勢が明確になりました。
トランプ大統領による追加関税の発表は市場に動揺を与え、ダウ工業株30種平均(DJIA)やS&P500種株価指数(SPX)は調整局面に、ナスダック総合指数(COMP)は弱気相場に突入しました。「これまでで最も厳しい投資環境だった」と語る投資家もいましたが、それでも個人投資家の買い意欲は衰えませんでした。
個別株とETFに資金が集中
ナスダックの集計では、2025年前半における個人投資家からの米国株およびETFへの純流入額は1,376億ドルに上りました。調査会社バンダ・リサーチのデータでも同様の傾向が見られ、純流入額は過去最大の1,553億ドルに達しました。これは、ミーム株ブームやパンデミック時の給付金が市場を押し上げた2021年の記録を上回るものです。
バンダによると、2025年の積極的な買いの背景には、「アメリカ例外論」への期待と、トランプ大統領による「解放の日」関税に対する押し目買いの動きがあるとされています。
個人投資家に特に人気だったのは、エヌビディア(NVDA)、テスラ(TSLA)、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)といった注目の個別銘柄でした。また、SPDR S&P500 ETF(SPY)やインベスコQQQトラスト(QQQ)など、インデックス連動型のETFにも多くの資金が流入しました。
日次流入は13億ドル超、パフォーマンスも堅調
バンダの分析によると、個人投資家からの平均日次資金流入は13億ドルに達し、前年に比べて約21.6%増加しました。こうした積極的な投資姿勢は、リターンにも表れています。
同社は、2025年上半期における平均的な個人投資家のポートフォリオが6.2%の上昇を記録したと推定しています。これは、S&P500種株価指数の上昇率6.1%とほぼ同水準です。
市場を動かす個人投資家の存在感
「個人投資家の市場参加は過去最高レベルにあり、押し目買いの傾向も根強く続いている。高ベータ銘柄やレバレッジのかかった銘柄への関心も高まり、リスクを取る姿勢はむしろ強まっている」と、バンダ・リサーチのマルコ・イアキニ氏はコメントしています。
先行きに不透明感はあるものの、個人投資家の活発な売買は2025年後半の市場にも大きな影響を与えると見られます。投資家心理の強さが、市場の下支えとなる可能性が高いといえます。