米投資情報メディアのマーケットウォッチに7月5日に掲載された記事が、投資家にとって興味深いテーマを投げかけました。その内容は、「AIを使っても市場には勝てないのではないか?」というものです。
この記事では、AI(人工知能)を活用する投資戦略がどれほど広がったとしても、平均的な運用成果は市場の平均(例えばS&P500)を下回るという現実が解説されています。
ウィリアム・シャープの「アクティブ運用の算術」
記事の核となるのは、1990年のノーベル経済学賞受賞者ウィリアム・シャープが提唱した「アクティブ運用の算術」。この理論によれば、すべてのアクティブ運用を合計すれば市場全体の平均と一致します。したがって、手数料などのコストを考慮すれば、平均的なアクティブ運用はインデックス(市場平均)に劣後せざるを得ないというのです。
AIを活用したファンドの現状
実際のデータでもこの理論は裏付けられています。たとえばAIを活用するヘッジファンドのパフォーマンスを示す「Eurekahedge AI Hedge Fund Index」は、長期的に見てS&P500に大きく劣後。さらに、AIを活用すると公言している米国大型株ファンドの多くも市場平均を下回っています。
AIがどれほど進化しても、「過去のデータに基づく分析ツール」に留まる限り、新しい発想を生み出すことは難しいのかもしれません。
本質的な問い:AIに「創造性」はあるのか?
記事では、iSharesの立ち上げに関わったローレンス・ティント氏の見解も紹介されています。同氏は、もしAIが本当の意味で「創造的」になった場合、そのアドバンテージは他のAIによってすぐに模倣・吸収されてしまい、結局市場に勝てなくなると指摘しています。
逆に、AIが創造性を持たず、あくまで強力な分析ツールであるならば、それを巧みに使える「創造的な人間」こそが差別化の源になるとも述べています。
インデックス投資という最終解
皮肉なことに、AIの分析が進めば進むほど、「低コストのインデックスファンドに投資すべき」という結論に至る可能性が高いという指摘も見逃せません。これは、最も合理的な長期投資の手段が、結局はシンプルなインデックス運用であることを示唆しています。
AI時代でも市場に勝つのは難しい
AIがどれほど進化しても、「市場に打ち勝つこと」は容易ではありません。テクノロジーの力に期待しすぎず、堅実なインデックス投資や分散投資の価値を再認識する時期かもしれません。